著者
知念 渉
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.102-113, 2014

2000年代以降,「子ども・若者の貧困」に関する研究が数多く蓄積され,貧困家族を生きる子ども・若者たちの生活上の困難を明らかにしてきた.しかし,山田 (2005)が指摘するように,現代社会を生きる人々にとって,家族とは,生活に役に立つ/立たないという観点から理解できる「機能的欲求」には還元できない,自分の存在意義を確認する「アイデンティティ欲求」を満たす関係にもなっている.このような観点に立てば,従来の「子ども・若者の貧困」研究は,アイデンティティ欲求の次元における「家族であること」のリアリティを相対的に看過してきたと言えよう.そこで本稿では,「記述の実践としての家族」という視点から,文脈や状況に応じて流動する若者と筆者の間に交わされた会話を分析し,アイデンティティ欲求の次元における「貧困家族であること」のリアリティを明らかにした.そして,そのリアリティが,流動的で,相対的で,多元的であることを指摘し,その知見がもつ政策的示唆について考察した.
著者
松田 茂樹 鈴木 征男
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.73-84, 2002-03-31 (Released:2010-11-18)
参考文献数
20
被引用文献数
2 2

本稿では, 平成8年社会生活基本調査の個票データを用いて, 夫婦の家事時問の規定要因を探った。分析に使用したのは, 同調査のうち, 夫が60歳未満で就労している夫婦約1,200組の平日の個票データである。分析は, 夫と妻の家事時間が, 本人の労働時間と配偶者の労働時間, 家事時間にどのように規定されるかという点を中心に行った。多変量解析の結果, 次のことが明らかになった。 (1) 夫, 妻とも本人の労働時間が長くなるほど, 家事時間は短くなる。ただしその傾向は妻で顕著である。 (2) 配偶者の労働時間が長くなると, 本人の家事時間は増加する。ただし夫の家事時間は, 妻の労働時間が自分以上に長いときに増加する。 (3) 夫と妻の家事時間の間には, 一方が増加すれば他方が減少するというようなトレードオフ関係はない。これらの結果から, 妻が中心となって家事を行い, 妻がすべてできない場合に夫が支援するという現代夫婦の家事分担像が示唆された。
著者
片岡 栄美
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.30-44, 2009
被引用文献数
5

小・中学受験をめぐる親の教育戦略について,社会階層,社会的閉鎖性,リスク,異質な他者への寛容性,文化資本,社会関係資本の概念を用いて,社会学的に検討した。<br>子をもつ親を母集団とする質問紙調査を,関東圏で層化2段確率比例抽出法により実施し,以下の知見を得た。第1に,受験家庭と非受験家庭の階層差は大きく,受験は階層現象であるが,受験の規定要因は高学歴の母親の影響が最も大きい。第2に,受験を希望する親たちは受験先の学校に文化的同質性を求め,異質なハビトゥスの親とは交流しないという意識と態度を示した。つまり受験は,社会的閉鎖性や異質な他者への非寛容につながる現代の階層閉鎖戦略である。第3に,受験は,親たちが教育リスクを回避するための主体的な学校選択である。第4に,受験を選ぶ親ほど自らの競争的な価値観を再生産し,一方で子どもへの価値期待では寛容性を強調する。第5に,受験組の親は地域ネットワークから切り離され,生活圏が分断化する傾向にある。
著者
釜野 さおり
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-27, 2008
被引用文献数
2

本稿では,男女一対一の性関係を基盤にした関係と血縁に絶対的な価値をおき,ジェンダーに基づく役割分担の再生産が行われる「従来の家族」に対し,レズビアン家族・ゲイ家族の実践から何を問いかけることができるかを,先行研究などから実例を挙げて検討した。(1) レズビアンやゲイにとって友人やコミュニティが家族になっていること,(2) 血縁家族は精神的な支えになるとの前提が疑問視され,誰を「家族」と見なすのかの再考がなされること,(3) レズビアンやゲイが親になることで,「親=父親+母親」との前提が崩され,親子関係が「無の状態から交渉できるもの」となりうること,(4)ジェンダー役割を問い,日常の家事や育児に柔軟に対応するパートナー関係の実践があることを挙げ,これらが「従来の家族」に問いかける可能性があると論じた。最後に,レズビゲイ家族の実践が主流への同化か挑戦かの判断の難しさを述べた。
著者
千田 有紀
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.94-94, 2000-07-31 (Released:2010-05-07)

ジェンダーの意味にまつわる現代のフェミニズムの議論は、たいていの場合、何らかのトラブルの感覚に行きついてしまうと、著者はいう。しかしジェンダーの意味をひとつに決定できないことは、フェミニズムの失敗ではない。トラブルは、「女」という謎めいた事柄に関連させられたことであり、大切なのはトラブルを避けることではなく、トラブルに隠された秘密を暴き、うまくトラブルを起こすことである。このような意味が、本の題名には込められている。副題は、「フェミニズムとアイデンティティの撹乱」。セックス、ジェンダー、性的欲望と実践からなる一貫したアイデンティティや「女」という主体の存在に疑問を投げかけ、これらがいかに権力の法システムによって生産されるかを解き明かした、フーコー流社会構成主義の本である。構成は、第一章が「〈セックス/ジェンダー/欲望〉の主体」である。この章は『思想』にかつて翻訳された章で、本書の章のなかでもっとも有名な部分であり、基本的な分析の枠組みが述べられている。ここでは、生物学的なセックス、文化的に構築されるジェンダー、セックスとジェンダーとの双方の「表出」、つまり「結果」として表出される性的欲望のあいだに、因果関係を打ちたてようとする法システムに疑問が投げかけられる。その結果、法システムこそが、ジェンダー、そしてセクシュアリティ、さらにはセックスを生みだすのであって、セックスが、ジェンダーやセクシュアリティを生みだすのではないことがあきらかにされる。本書の主張は、この章に還元されるものではないが、やはりこの本の白眉であることは間違いない。第二章は、「禁止、精神分析、異性愛のマトリクスの生産」である。レヴィ=ストロースの構造主義にはじまって、フロイト、ラカンの主張が分析の俎上にのせられる。近親姦のタブーは、禁止することによって欲望を生み出す装置である。精神分析に関する分析がなされているぶん、家族社会学者には興味深い章だろう。最後に第三章、「攪乱的な身体行為」では、クリステヴァ、フーコー、ウィティッグまでもが、批判的に検討される。とくに男と女の対立を止揚するものとして「レズビアン」というカテゴリーをもちだすウィティッグに対する批判は、システムのなかで解放を語る難しさについて考えさせられる。
著者
コー ダイアナ 釜野 さおり
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.124-134, 2013

本稿では,成人子と親との関係に関する研究のレビューを通じて,母娘関係の研究では異性愛が前提とされていることを示し,娘が異性愛的理想を拒否する・それを達成できないことを視野に入れることで,母娘関係の研究に新たな課題を提起することを指摘した.筆者らが過去に実施した同性間の関係に関する質的調査のデータを用いて,(1)異性愛規範性は,異性愛の母親とレズビアンの娘の関係において強化されると同時に揺るがされること,(2)母娘関係において距離をもつことと親密性は排他的ではないこと,(3)娘から母親に向けた,同性愛的指向・同性とのパートナー関係の開示は複雑であること,(4)母と娘のジェンダーの共有が,異性愛規範を強化せずに親密性の促進につながる場合があること,(5)娘の女性パートナーは母娘関係に重要な影響を与える存在であることを,実例で示した.レズビアンの娘とその母親との関係に着目することは,家族のダイナミックスのクィア分析に有用であることが示唆された.
著者
石井 クンツ昌子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.83-93, 2004-07-31 (Released:2009-08-04)
参考文献数
31
被引用文献数
1

不登校, ひきこもり, 青少年犯罪など子どもに関する様々な問題はあとを絶たない。これらの要因のひとつとして子どもの社会性の欠如があげられると同時に親子関係の問題も指摘されてきた。日本の親子関係に関する研究は主に乳幼児の発達と母親を対象にしたものが多く, 父親が子どもの社会性にどのように影響しているかについての研究は少ない。さらに就学児の社会性と父親の子育て参加の関連についての研究はほとんどなされていない。米国の研究についても同様なことが指摘される。本稿では父親の子育て参加が就学児の社会性に及ぼす影響に焦点をおき, 母親の子育て参加, 父母の年齢と教育程度, きょうだいの数, 子どもの年齢と性別, そして家族構造などの影響を解明する。日米のデータを重回帰分析した結果, 父親の子育て参加が活発であるほど就学児の社会性が高いことが明らかになった。さらに子どもの社会性に関しては子どもから見た父親の子育て参加が父親自身から見た子育て参加よりもより強い影響を示していることも解明された。
著者
風間 孝
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.32-42, 2003
被引用文献数
1

本稿は, 同性婚の政治性を明らかにすることを目的とする。まず, 近代家族が異性愛規範に基づくことにより, 同性愛者を周縁化し, 家族を形成する機会を奪ってきたことを論じた。つぎに, 近代家族を批判する立場からの婚姻制度の解体が多様性の承認につながるという主張は, 権力関係の外部を前提にしていることを指摘した。<BR>最後に, 家族制度擁護論に基づく反対論の分析を通じて3つの点を指摘した。第1に婚姻の定義に基づく同性婚の拒絶は法が特定の定義を採用する恣意性を隠蔽することによって成り立っていること。第2に生殖に基づく拒絶は同性カップルが規範的異性愛家族およびジェンダーの (再) 生産につながらないことを理由としており, それゆえに同性婚の要求は家族と規範的異性愛とジェンダーの結びつきに異議申立てを行うものであること。第3に同性婚の要求は, 近代の特徴である異性愛規範に基づいた公/私二元論の枠組みを問題化するものであること。
著者
杉浦 郁子
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.148-160, 2013

本稿では,性別違和感のある人々の経験の多様性が顕在化したことを背景に,「性同一性障害であること」の基準として「周囲の理解」が参照されるようになった可能性を指摘する.また「性同一性障害」がそのように理解されるようになったとき,性別違和感のある子とその親にどんな経験をもたらしうるのかを考察する.<br>まず,1980年代後半から90年代前半に生まれた若者へのインタビュー・データを用いて,「周囲の理解」という診断基準が出現したプロセスについて分析する.次いで,「性同一性障害」の治療を進めようとする20代の事例を取り上げ,医師も患者も「親の理解」を重視していることを示す.そのうえで,親との関係調整の努力を要請する「性同一性障害」という概念が,親子にどのような経験を呼び込むのかを論じる.
著者
大貫 挙学 藤田 智子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.72-83, 2012-04-30 (Released:2013-07-09)
参考文献数
27

1970年代以降,フェミニズムは,ドメスティック・バイオレンス(DV)の背景に,近代家族における男性支配の権力構造があることを指摘してきた.これまで,多くの女性がDV被害に遭ってきたが,「被害」女性が「加害」者となってしまうケースもある.本稿では,DV被害女性が夫を殺害したとされる事件を取り上げ,動機の構成という点から,刑事司法における家族規範について考察する.裁判で弁護人は,被告人の行為を, DVから身を守るためのものだったと主張した.しかし裁判所は,弁護人の主張を退けている.検察官は,被告人の「不倫」を強調していたが,判決においては,「不倫」に対する非難ゆえに,弁護人の動機理解が否定されたのだ.本件裁判は,「不倫」を「逸脱」とみなす規範によって,弁護人のストーリーが排除される過程であった.近代家族モデルの犠牲者たる被告人が,家族規範からの「逸脱」ゆえに処罰されたといえよう.
著者
松木 洋人
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.18-29, 2007-04-30 (Released:2009-08-04)
参考文献数
15
被引用文献数
4

本稿では, 子育て支援の提供者の語りを分析することによって, 彼らが自らの経験をどのように理解しているのかを考察する。子育て支援の理念は, 従来の公的領域と私的領域の区分の再編成を含意しているが, その一方では, 家族に育児責任を帰属する規範はなお根強く存在している。このような状況において, 外部の人間が子育てに対して支援を行うことは, 家族責任についての規範的理解との間でのジレンマを提供者にもたらす可能性がある。提供者がそのようなジレンマに直面することを回避するには, 提供者が自らの活動を家族関係への支援として定義することが有効であるが, 提供者が子どもの親との関係を十分に形成できない状況では, 職務の限定性が生じることは避けられない。支援の受け手の限定化を前提としつつ, 提供者がその限定対象を創出するような働きかけを子どもの親に対して行うことが, 子育て支援を家族支援として行うための一つの実践的な解決となる。
著者
志田 哲之
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.105-105, 2001

セジウィックによる本書は, 奇しくもバトラーの『ジェンダー・トラブル』と, その原著 (1990), 日本語訳 (1999) ともそれぞれ同年に出版された。バトラーが既存のジェンダー理解を構築主義的視点から批判的に問いかけたというならば, セジウィックは同様の視点から同様の問いかけを既存のセクシュアリティ理解に対して行なったといえ, 両書はジェンダー・セクシュアリティ研究に対し, 強いインパクトを与えた。<BR>「近代西洋文化の実質上どのような側面についての理解も, 近代のホモ/ヘテロセクシュアルの定義に関する批判的な分析を含まない限りは, 単に不完全というだけではなく, その本質的部分に欠陥を持つことになる」 (P.9) 。冒頭においてそう主張する著者は, その批判的分析を, 異性愛主義を内在化させている20世紀の西洋文化全体の側からではなく, 近代のゲイ理論および反同性愛嫌悪 (アンチ・ホモフォビア) の理論といった, 相対的に中心から外れた視点から始めることが適切であるとし, この視点から本書を著わした。このような問題関心から, 本書は二項対立化されている男性のホモ/ヘテロセクシュアルの定義が内包する矛盾や非一貫性に着目し, この矛盾や非一貫性に対して裁定を図るのではなく, むしろそれらの有するパフォーマティヴな効果を明らかにすることを企図した。<BR>序論では, ホモ/ヘテロセクシュアルの定義問題や二項対立について, またジェンダーとセクシュアリティを区分することによって生じる研究上の生産性についてなど, ホモセクシュアリティを研究していくうえでの諸議論に対し, 鋭い予備的考察が公理のスタイルをとって展開されている。序論としての役割を果たしながらも, この序論のみでホモセクシュアリティに関する今日的議論の概観を把握することが可能であり, まずはこの序論を一読することを勧めたい。<BR>第1章から第5章にかけては20世紀の欧米の文学作品を分析対象として, 本質主義対構築主義の拮抗, 二項対立, ホモセクシュアル・パニック, クローゼットという沈黙の発話状態などについて詳細に論じている。<BR>西洋文化圏において対照的な二項対立化された諸カテゴリーが, 実は暗黙のうちにダイナミックに存続しており, ホモ/ヘテロセクシュアルもその一部であるという筆者の主張は家族研究に連結する。なぜならこれら諸カテゴリーのリストとして筆者がとりあげた私的/公的, 男性的/女性的などは, 近代家族論の立脚点と相通じるからであり, 本書において筆者が行ったこれら二項対立の脱構築の試みは, 今後の家族研究のさらなる展開に対し示唆的であろう。また, 近代家族論以前の家族研究が, ホモセクシュアリティを研究の対象外とするか, あるいは病理として扱い, そして近代家族論においてはジェンダーを主要な軸のひとつに据えているものの, ホモセクシュアリティについては俎上に乗せられなかったという経緯をふまえるならば, 近代家族論以降の家族を論じる際にホモセクシュアリティという, あらたな軸を導入する意義や可能性について検討するヒントも本書から与えられるだろう。
著者
釜野 さおり
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.188-194, 2009-10-30 (Released:2010-10-30)
参考文献数
30
被引用文献数
3 1
著者
神谷 悠介
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.135-147, 2013

本稿は,インタビュー調査に基づき,ゲイカップルにおける家計組織とパートナー関係を分析することによって,(1)レズビアンカップルと比較した際のゲイカップルの家計組織の特徴, (2)家計組織パターンと平等なパートナーシップとの関係,(3)同性愛者に対する差別が,ゲイカップルにおける家計組織や生活状況に与える影響について解明することを目的とする.分析の結果,(1)レズビアンカップルは共同管理型が典型的な家計組織パターンの一つであるのに対して,ゲイカップルは独立型が典型的な家計組織パターンであること,(2)家計組織の独立性は,平等なパートナーシップを保障するとは限らないこと,(3)同性愛者に対する差別がゲイカップルにおける生活の個別性の一因であることが解明された.
著者
湯澤 直美
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.45-56, 2009-04-30 (Released:2010-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

子育て家族の経済基盤の二極化の進行のなかで,子育ての実態はいかなる現況にあるのか。本稿では,より困難が集約されている家族の現実を考察するため, 貧困の世代的再生産が把握される母と子のライフヒストリーをもとに,いかなる政策対応が求められるのかを検討した。分析からは,子ども期の貧困が若者期の貧困化に直結し,母子家族の貧困—女性の貧困へと分かち難く連なる慢性的貧困が確認された。子ども期の貧困の持続的な影響力は,貧困化と孤立化の連鎖により,生活基盤に加えて家族の形態も流動化させ,解体された家族は社会的排除のなかに置かれていた。子どもの貧困克服には,親世代における富の不平等に積極的に介入し,教育・福祉・医療・住宅・労働など包括的な支援システムが必要である。加えて,貧困リスクのなかで生きる子どもへのソーシャルワークによる子どもの孤立化の防止と,社会的包摂に向けたエンパワーメントの視点が必要であることを提言した。
著者
小玉 亮子
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.154-164, 2010-10-30 (Released:2011-10-30)
参考文献数
35
被引用文献数
1

長く教育学研究のメインストリームは学校であり,家族というテーマは,必ずしも市民権を得てこなかった。アリエスの『子供の誕生』(1960=1980)は,日本語で翻訳されるやいなや,非常に大きな反響を得た。ちょうど,子どもの問題が社会問題化した時期とも重なり,この著作は,従来の子ども理解の相対化のための理論的根拠を与えるものとなった。アリエス以降,自明のものであった近代的子ども観,近代家族,近代学校が問い直され,教育学の在り方それ自体に対する問題提起がなされた。同時に,子ども問題への社会関心の高まりに呼応して,家族をターゲットとした教育政策も次々と打ち出されるようになった。教育学研究においても,教育政策においても,家族はその重要なテーマとして位置づけられてきた。しかし,家族や学校への研究上・政策上の関心の高まりは,同時にそれらへのバッシングと結びついてきた側面があったことは否めないのではないだろうか。
著者
余田 翔平
出版者
日本家族社会学会
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.139-150, 2014

本稿では,再婚率の(1)趨勢,(2)階層差,(3)趨勢変化の階層差に着目して記述的分析を行った.『日本版総合的社会調査(JGSS)』にイベントヒストリーモデルを適用した結果,以下の知見が得られた.第1に,近年の離死別コーホートほど,再婚ハザードは低下している.第2に,男性よりも女性のほうが,低学歴層よりも高学歴層のほうがそれぞれ再婚経験率が高い.第3に,学歴と再婚経験との正の関連は近年の離死別コーホートほど明確に現れており,一方で再婚経験率の性差は縮小傾向にある.<br>以上を踏まえると,日本社会では「離死別者の非再婚化」が進展しており,未婚化・晩婚化のトレンドとあわせて考えれば,無配偶の状態に滞留するリスクがライフコースを通じて高まっていると推測される.さらに,こうしたライフコースの変化は社会全体で一様に広がっているわけではなく,階層差を伴っている.