著者
木村,敦
出版者
日本色彩学会
雑誌
日本色彩学会誌
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, 2006-03-01

近年の知覚-感性情報処理研究によると,快・不快感情は複数の異なる水準にて処理されることが示唆されている.一方で,色彩調和研究においては,それらの知見との対応は検討されておらず,調和と不調和とが1つの原理によって判断されるという調和・不調和原理の両極性が仮定されている.本研究は調和感評定における個人差量を調和と不調和で比較し,この両極性の仮定を検証することを目的とする.予備実験では,22名の学生に調和度(調和・中間調和・不調和)を操作した4色配色をP.C.C.S.準拠のカラー・カードを組み合わせて制作させた.本実験では,予備実験で制作された配色について,別の学生24名が調和感評定を7段階評定で行った.その結果,調和感評定における個人差量は調和度によって異なった.とくに,不調和配色は調和配色よりも評定の個人差量が小さかった.これは配色の調和・不調和が複数の感性情報処理水準によって判断されていることを示唆するものであり,調和・不調和原理の両極性の仮定を支持しない.