著者
菊池 義公 大森 景文 木澤 功 喜多 恒和 宮内 宗徳 岩野 一郎 加藤 宏一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.81-86, 1988-01-01

この研究は, ヒト卵巣癌移植ヌードマウスを用いてカルモデュリン拮抗剤(W-7およびW-5)との併用によつてシスプラチンの抗腫瘍効果を増強するべく行なわれた. シスプラチンとW-7またはW-5との組合せで治療されたヌードマウスの腫瘍発育はW-7単独, W-5単独またはシスプラチン単独で治療されたヌードマウスのそれに比べて有意に抑制された. シスプラチン単独投与は腫瘍移植ヌードマウスの脾細胞の本腫瘍標的細胞に対する障害活性を著しく阻害した. しかしながらシスプラチンによるこの阻害効果はW-7またはW-5との併用によつて除かれ得た. シスプラチン単独, W-7単独およびW-5単独投与群の間でその生存期間において有意差は見出されなかつた. シスプラチン投与に引き続いてW-7またW-5が投与された時, W-7またはW-5によるシスプラチンの抗腫瘍効果の有意な増強が, 腫瘍発育の抑制という点ばかりでなく生存期間の延長という点でも観察された.