著者
加藤 宏一
出版者
一般社団法人 日本頭痛学会
雑誌
日本頭痛学会誌 (ISSN:13456547)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.584-589, 2023 (Released:2023-04-20)
参考文献数
7

医療機関での頭痛の実態調査を行い,就労者の健康や職場環境のあり方につき検討した.労働者健康安全機構東京労災病院に勤務する職員に対し,アンケート方式にてデータ収集を行った (回収率97%) .頭痛は女性に有意に多く,職種別では看護師に有意に多かった.頭痛時の自覚的な就業能力も低下しており,頭痛は気圧の変化,夜勤明け,忙しいときに生じやすかった.職場での配慮に関しては「自分からは言わない」と回答した職員が53.6%いた.頭痛で早退・欠勤したことがある職員は5%以下であった.頭痛時は就業能力が低下していても休める状況ではなく,プレゼンティーズムが問題であった.職場での頭痛に対する理解や休息できる環境整備などが重要である.
著者
加藤 宏一 比嘉 隆 中野 紘 野村 俊介 中川 将徳 門山 茂 氏家 弘 寺本 明
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.185-189, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
17

出血発症の椎骨動脈解離(vertebral artery dissection: VAD)において,前脊髄動脈(anterior spinal artery: ASA)が解離側VA から2 本分岐しY 字型にfusion している症例を経験したので報告する.症例は43 歳男性.くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH)で発症した破裂VAD で,解離部から1本,解離部より末梢の正常部位から1 本ASA が分岐し,fusion 後に下行していた.マイクロカテーテルを3 本使用しASA を温存しVAD のinternal trapping を行った.片側VA から2 本のASA が分岐しfusion するタイプの血管走行は今まで報告がなく本症例が初めてである.ASA の起始部にはvariationがあり,VA union 近くの塞栓術では脳幹への穿通枝とともにASA 分岐の詳細な観察が必要である.
著者
菊池 義公 大森 景文 木澤 功 喜多 恒和 宮内 宗徳 岩野 一郎 加藤 宏一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.81-86, 1988-01-01

この研究は, ヒト卵巣癌移植ヌードマウスを用いてカルモデュリン拮抗剤(W-7およびW-5)との併用によつてシスプラチンの抗腫瘍効果を増強するべく行なわれた. シスプラチンとW-7またはW-5との組合せで治療されたヌードマウスの腫瘍発育はW-7単独, W-5単独またはシスプラチン単独で治療されたヌードマウスのそれに比べて有意に抑制された. シスプラチン単独投与は腫瘍移植ヌードマウスの脾細胞の本腫瘍標的細胞に対する障害活性を著しく阻害した. しかしながらシスプラチンによるこの阻害効果はW-7またはW-5との併用によつて除かれ得た. シスプラチン単独, W-7単独およびW-5単独投与群の間でその生存期間において有意差は見出されなかつた. シスプラチン投与に引き続いてW-7またW-5が投与された時, W-7またはW-5によるシスプラチンの抗腫瘍効果の有意な増強が, 腫瘍発育の抑制という点ばかりでなく生存期間の延長という点でも観察された.
著者
永田 一郎 加藤 宏一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.29-38, 1986-01-01
被引用文献数
2

子宮脱の修復にあたり,十分な長さの腟を保存し,しかもつねに確実な修復効果を得ることはなかなか難しい.この目的のために,腟上端を仙棘靱帯に固定する手法を従来の腟式手術に組み合わせてみた.対象は1983年4月から1984年4月までの間に,当科で行つた手術例11例(腟式子宮全摘術+前後腟壁整形術9例,Manchester手術1例,前後腟壁整形術のみ1例)であつた.仙棘靱帯固定術は前方操作,子宮操作終了後に行う.後腟壁を逆丁字切開し,通常右の直腸側腔を展開し,坐骨棘を指標として仙棘靱帯を露出する.2本の糸をこれに通し,後腟壁右上端に結合させて腟を挙上固定する.ついで肛門挙筋縫合などを含む後腟壁整形術をかるく行う.術前術後の腟の脱垂状況の評価に部位別の腟scoreを用いた.すなわち尿道脱,膀胱脱,子宮または腟上端の脱,小腸脱,直腸脱の5部位について,脱垂の程度を0〜4点で表し,この順に並べて記載する.術前すべての部位で4点を示した高度子宮脱も本法施行後のscoreは全て良好で,とくに腟上方から後方にかけての修復状況は全例0点を示していた.また術後の腟の変位と移動方向をみるために,subtraction腟重複造影法を試みた.腟に造影剤をつめ,腹圧の前後で側面像を2枚撮り,1枚のフィルムの白黒を逆転し2枚重ね合わせてプリントする方法である.仙棘靱帯固定術を行つた例では腟が背足方に変位しており,腹圧にて腟はその長軸に平行に足方に移動した.一方仙棘靱帯固定術を行わない例では,腟の位置は正常例と同じであつたが,腹圧にて腟は長軸に沿つて前足方に移動した.