著者
本多 康人
出版者
公益社団法人 日本植物学会
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.890, pp.309-315, 1962 (Released:2006-12-05)
参考文献数
1

1. ルコウソウの花色について, 赤色と白色との 関係は不完全優性で, F1雑種は桃色で, F2では赤 と桃色と白が1:2:1に分離した.2. ルコウソウの桃色には二種類ある. その一つ は純系のもので, 他は赤色と白色との雑種である. そしてそれらの関係は今後の研究にまたねばならな い。3. マルバルコウ×ルコウソウでの受精率は硫酸 紙をかぶせた普通の交配方法で, 野原の研究では1 ~2%であるが, 著者は, これは交配時刻の問題と 考え, 午前7~10時の間では51%であった.4. マルバウコウ×ルコウソウのF1雑種は野原 の研究と同じく不稔である.5. ルコウソウ属植物はすべて気温が14°以下で は, やくが破れず交配不能である.6. ルコウソウ属植物はすべて短日植物である.7. 野原によれば, ルコウソウの赤色はマルバル コウの黄土色に対して優性とあるが, その結論は出 されない. なぜならば, マルバルコウ×ルコウソウ 白色でもマルバルコウ×ルコウソウ桃色でもF1雑 種は緋色があらわれるからである.この花色の優劣 関係の決定にはさらに遺伝生化学的研究が必要であ る.8. モミジバルコウより葉形の突然変異体が出現 した.9. 突然変異体とモミジバルコウとの交雑では, F1雑種では中間の葉形を示し, F2世代では, 突然 変異体 : 雑種形 : モミジバルコウが1:2:1に分 離した.