著者
本林 響子
出版者
お茶の水女子大学日本言語文化学研究会
雑誌
言語文化と日本語教育 (ISSN:09174206)
巻号頁・発行日
no.31, pp.23-29, 2006-06

本稿は、カミンズの著書"Language, Power and Pedagogy"(2000)に沿って、その一連の理論を紹介することを目的とする。本稿ではまず、バイリンガル教育に関する心理言語学的な理論である「BICS/CALP」の概念、「相互依存仮説」、「敷居仮説」の3つについて、基本的な概念を整理するとともに、これらの理論の発表後に起こった議論、反論、誤解に対するカミンズ自身の見解を紹介する。次に、社会における力関係とマイノリティの生徒の学習とを関連付けた「協動的エンパワメント」理論について述べる。そして最後に、カミンズが本書の中で論じている、多文化教育における「トランスフォーマティブ教育」の可能性に言及して論を終える。