著者
本橋 一浩
出版者
東京都立青梅総合高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

農業高校では、林業科を中心に食品科、園芸科が教育課程の中で、きのこの栽培が取り上げられているが実際のところ、きのこ栽培は授業にはなかなか取り上げられていないのが現状である。以前おこなったアンケート調査によると、施設設備の問題と、教員がきのこ栽培の経験不足の場合が多くみられ、このことが大きな要因となっている。勤務校である東京都立青梅総合高等学校の場合、総合学科であるが教科「グリーンライフ」「生物活用」「発酵学入門」「自然と農業」などでも、きのこ栽培とその加工を取り上げていないのが現状である。よって教科書に掲載されているきのこ栽培の参考資料的な位置づけとなる、生物実験室レベル程度の環境でも行えることに配慮したテキストを作成することと、生徒の実習も可能なきのこの加工方法を開発することを目標とした。初めにきのこ培養・栽培に必要な環境をつくる方法の研究として、簡易栽培室を暖房機、送風機、扇風機を組み合わせ作った。一室の中にビニールで覆う空間を作り空調を行うが、園芸に使われている温室機器が適していた。常に排気を行わなければCO2濃度の上昇と共にきのこの生育が悪くなるため、換気が必要である。栽培実験では、きのこ菌培養のための培地の研究をおこなったが、かび用培地では栄養素の不足が問題点であったため、いろいろ添加してはみたものの、コンタミネーションが多く発生して思うような培地作成は道半ばである。現時点では、白アワビタケでは、おから、米ぬか。ヒラタケではコーンミール、おから。ハナビラタケではバナナが比較的よい結果となっている。また植物用無機液体肥料も有効である。シイタケは桜、ならの原木栽培をおこなってみたがコンタミネーションが多く発生し、結果を残せなかった。子実体から一次菌糸の培養方法の研究では、子実体の使用部位、使用培地、培養条件などを変えてみて、一次菌糸から二次菌糸への変換の観察方法の研究と菌糸の観察法、二次菌糸から子実体形成への発生条件、発生後の管理などの比較試験を行いデータを収集することができた。栽培したきのこの加工方法の研究では、加工したきのこを真空包装しても、十分な加熱を行わないと異常発酵が発生しやすく、殺菌の温度、時間の管理が重要であり、製造業者は加圧殺菌で安全性を確保している。この点に留意すれば製品化は可能とわかった。産地への訪問と調査では、きのこの各種製品と製造方法、栽培現場、培地材料等参考になった。