著者
長岡 和則 本田 幸一郎 宮野 敬治
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.665-674, 1996-11-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
4 5

現在, 環境γ線モニタリングには各種の測定器が使われている。しかし, 得られた測定結果は必ずしも一致しない。それはそれぞれの測定器の特性の違いが原因となっているが, 中でも宇宙線に対する感度の違いが最も大きく影響していると考えられる。今回, 各種測定器の宇宙線に対するレスポンスを明確にするため, 宇宙線強度の異なる環境場として富士山で高度を変えて, NaI (Tl) シンチレーションスペクトロメータ, ステンレス鋼製加圧型電離箱線量計, 空気等価電離箱線量計, TLD, 蛍光ガラス線量計およびNaI (Tl) シンチレーションサーベイメータの比較測定を行った。3″φ球形のNaI (T1) シンチレーション検出器の3MeV以上の計数率と各測定器の宇宙線寄与線量率との間には明らかな相関が得られた。同計数率を測定することで, 各測定器の測定結果への宇宙線の寄与線量率を推定することが可能と考えられる。同計数率から各測定器の寄与線量率への換算係数 (nGy/h/cpm) は, 空気等価電離箱, 加圧型電離箱, TLD, 蛍光ガラス線量計およびNal (Tl) シンチレーションサーベイメータ (TCS-166およびTCS-121C) では, それぞれ0.33, 0.32, 0.25, 0.24, 0.06および-0.01であった。また, 東京大学宇宙線研究所鋸山施設で測定を行い, 自己照射線量率を評価した。TLDと蛍光ガラス線量計は約6nGy/hの自己照射があり, 環境γ線線量率を測定する際には考慮する必要があると考えられる。これらのデータは, 環境γ線線量測定において, 宇宙線寄与分および自己照射線量の評価に有用であると考えられる。