著者
本田 早潔子 川崎 達也 山野 倫代 佐藤 良美 張本 邦泰 三木 茂行 神谷 匡昭
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.966-971, 2015 (Released:2016-08-15)
参考文献数
14

人工心臓弁を有する症例の心エコ−図検査で左室内を移動する高輝度の点状エコーを検出することがある. これは血液中に出現した一過性の微小気泡と考えられ, キャビテーション気泡と呼ばれている. 本研究の目的は人工心臓弁に関連したキャビテーション気泡の臨床的特徴を検討することである. 当院で経胸壁心エコー図検査を施行した人工心臓弁を有する連続50例中11例 (22%) にキャビテーション気泡を認めた. 年齢と性別で補正したロジスティック回帰分析では, 低肥満指数 (カイ2乗=0.65, 95%信頼区間=0.43-0.98, p=0.038) と低年齢 (カイ2乗=0.90, 95%信頼区間=0.81-1.00, p=0.049) がキャビテーション気泡の独立規定因子であった. 心エコー図検査で評価した左室形態や各種ドプラ波形とキャビテーション気泡の有無は関連しなかった. キャビテーション気泡を呈した症例はすべて機械弁を有し, 大動脈弁位 (13%) より僧帽弁位 (67%) で高頻度であった (p<0.01). 平均16カ月の観察期間中14例に有害イベントが生じたが, キャビテーション気泡の有無とは関連しなかった. 本研究では, 人工心臓弁に関連したキャビテーション気泡は機械弁に限定され僧帽弁位に高頻度であった. キャビテーション気泡は低肥満指数と低年齢に関連したが有害イベントとは関連しなかった.