著者
堀之内 広子 本砥 貴子 宇田 英典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.134-141, 2018 (Released:2018-04-03)
参考文献数
7

目的 医療や介護の基盤が十分でない外海小離島において疾病や加齢にともない生活を継続することが困難になったとしても,住み慣れた島での看取りを希望する住民のニーズに対応するための体制整備は,離島を有する自治体やそれを支援する都道府県といった行政の責務である。今回,外海小離島での看取り支援に活用することを目的として「看取りに関する事務マニュアル」を取りまとめたので,この作成プロセスとこれを用いた支援の展開について報告する。方法 外海小離島だけで構成される十島村の現状や看取りの阻害因子などを検討し,それらの結果をもとに,関係する機関・団体で協議を重ね「看取りに関する事務マニュアル」(以下マニュアル)を作成した。その後,マニュアルを活用して,看取り支援を行うとともに,課題や成果を検討しマニュアルの改訂を行った。結果 外界小離島での看取りにあたって,重要な問題となる死亡前後の関係機関・団体の対応について考え方や事務的手順をまとめたマニュアルを作成し,関係機関・団体で共有したことで,医療や介護の提供体制や専門職の人材が十分でない外海小離島であっても,複数の事例の看取り支援を行うことができた。さらに,これらの看取りを行う過程で生じた課題や成果を,関係機関・団体で情報共有,再検討し,マニュアルの改訂を行った。今後,地域や住民のニーズに即した看取り支援が行われることが期待される。結論 外海小離島という厳しい地域特性を踏まえながらも,現実的な支援を行うためにマニュアルの必要性は高い。また,村が主体となって進めるマニュアル作成や改訂作業のなかで,地域特性の分析・評価,協議の場の確保,広域に及ぶ医療機関や県,国の機関との調整など,保健所が果たすべき役割は重要であることが確認された。