著者
本間 正教 加藤 秀明
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.79-83, 2017-01-15

抄録 1990年にHoehn-Saricらは,fluvoxamineやfluoxetineといったセロトニン再取り込み阻害薬(以下,SSRI)投与中の患者5例にapathyが出現したことを報告した。今回,20歳台後半の男性の大うつ病患者に対し,escitalopramを投与したところ順調に改善し一旦寛解したものの,誘因なく急速に意欲低下を主とするapathyが出現したため,同剤を減量し,セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるduloxetineを上乗せしたところapathyが速やかに改善した症例を経験した。SSRIの有害事象としてのSSRI-induced apathy syndromeは海外で複数例報告されているが,本邦では少なく,escitalopramによる報告はない。SSRIにて治療中で,apathyを主とする病状悪化をみた場合は,本症の可能性を考慮する必要があることを指摘した。