著者
谷 敏昭
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.727-733, 2007-07-15

抄録 日本における動物虐待の実態はまだ不明な点が多く残っているのが現状であり,さらには動物虐待と対人暴力との関連性についても知られていない。動物虐待と暴力系犯罪および被虐待歴との関連性を解析し,動物虐待の意義について検討した。少年院に収容された少年(少年院被収容者)61名と2学年時以上の中学生125名が調査対象となった。少年院被収容者においては,さらに本件事件の暴力行為性の有無によって非暴力系犯罪少年と暴力系犯罪少年の2群に分けて解析した。その結果,一般中学生では動物虐待経験率は約40%,非暴力系犯罪少年においては約55%であり,暴力系犯罪少年では約80%がなんらかの動物虐待経験を有することが明らかになった。また,動物虐待と被虐待経験との関連性は認められなかった。わが国において,動物虐待は例外的な行為ではない。今回の結果は,海外で報告されている結果と同じように,対人暴力と動物虐待との関連性を強く推測させるものである。また動物虐待行為には,生命倫理および自然体験学習としての心理発達的側面が含まれていることも示唆された。
著者
熊倉 陽介
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.533-540, 2019-05-15

抄録 居場所ということばには心理的な意味合いが含まれており,自らのアイデンティティが確かめられる環境のことを意味する。居場所のなさはメンタルヘルスに大きな影響を与える。本稿では,ホームレス支援を居場所の臨床と位置付け,その新しい支援の方策であるハウジングファーストについて紹介する。ハウジングファーストは,「まず安定した住まいを確保した上で,本人のニーズに応じて支援を行う」という非常にシンプルな考え方であり,その根幹は「住まいと支援の分離(独立)」にある。治療を受けることや回復することなどの条件を求めず,居場所としての住まいを提供するという支援のあり方を考えることを通して,居場所について考察する。
著者
近藤 廉治
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.419-423, 1964-06-15

I.おじろく,おばさ制度 耕地面積の少ない山村では農地の零細化を防ぐために奇妙な家族制度を作つた所があつた。長野県下伊那郡天竜村(飯田の近く)では16-17世紀ごろから長兄だけが結婚して社会生活を営なむが他の同胞は他家に養子になつたり嫁いだりしない限り結婚も許されず,世間との交際も禁じられ,一生涯戸主のために無報酬で働かされ,男は「おじろく」,女は「おばさ」と呼ばれた。家庭内の地位は戸主の妻子以下で,宗門別帳や戸籍簿には「厄介」と書き込まれていた。かかる人間は家族内でも部落内でも文字通りの疎外者で,交際もなく,村祭りにも出ることもなかつた。明治5年には人口2,000人の村に190人の疎外者がいた。昭和35年には男2,女1となつて今や絶滅に瀕しているが,このような社会からの疎外者はどんな人間になつているかを検する機会を得た。
著者
内藤 朝雄
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.165-175, 2021-02-15

抄録 学校のいじめをモデル現象として,1) 群生秩序:集合的活性化輪郭が畏怖すべき規範の準拠点となる利害権力政治の秩序,2) 秩序の生態学モデル:複数の秩序が互いを環境として関係し合い位置付けあう生態学的な説明モデル,3) 人を生徒らしい生徒に変える自己裂開を伴う変換の連鎖としての学校らしい学校のコスモロジー,4) 自己裂開規範:自己を自発性の核心部分から裂け開いてしまうかのようなふるまいを倫理秩序の中心として強制し違背を許さない規範,についての理論を提示する。次にこれをもとに,構成要素を個体水準よりもミクロな内的メカニズムに設定し,それが個体水準を越えて,直接複数個体水準でまとまる現象を含めて説明するのに適した,IPS(inter-intra-personal-spiral)理論枠組とその可能性を展望する。ネットいじめは,1) 閉鎖空間の人間関係にネットが加わってブースター効果を及ぼすタイプと,2) 見ず知らずの被害者を不特定多数で攻撃するタイプに分ける必要がある。
著者
片桐 秀晃 中根 允文
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.375-382, 2013-04-15

抄録 双極性障害(躁うつ病)について,日本における一般住民の認知度,疾患に対するイメージ,および社会的距離について,また双極性障害の具体的な症例を各病相で提示し,各病相に対する認識についてインターネットを利用して調査した。「双極性障害」については72.8%が「聞いたことがない,知らない」と回答し,双極性障害の疾患としての認知度が低いことが示唆された。さらに社会的に否定的な態度やイメージを持たれている現状が示されるとともに,躁状態はうつ状態に比較し,病気として認識されにくい傾向が認められた。双極性障害が適切に診断・治療され,長期的な転帰を改善するためには,当事者や関係者だけでなく,広く一般住民における疾患の認知(適切な病相の認識)と理解が必要であると考えられた。
著者
康 純
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.755-761, 2011-08
著者
伊東 若子
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.529-533, 2017-06-15

はじめに 近年,成人の発達障害が注目を浴び,精神科外来を受診するケースが増えている。筆者は,睡眠障害を対象とした睡眠専門外来を行っているが,発達障害の患者が睡眠の問題を訴え来院するケースも非常に増えている。筆者が所属する病院が成人の発達障害専門外来を有しているところも大きいかもしれないが,睡眠の問題を訴えてくる患者の中に,「発達障害もあるのではないか」と自ら相談してくるケースや,また,睡眠の問題を主に訴えてくる患者であっても,その背景には発達障害があり,その結果としての睡眠の問題であることも多く経験する。発達障害に睡眠の問題を多く認めることは以前より知られているが,その原因は単一ではない。発達障害における睡眠障害は,発達障害の病態と深く関連しているものがあり,本稿では,発達障害の中でも注意欠如・多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder;ADHD),自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder;ASD)と睡眠の関係について,病態との関係から概説したい。
著者
西尾 友三郎 菅 修 元吉 功 加藤 伸勝 後藤 彰夫 皇 弘 立津 政順 長坂 五朗
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.688-703, 1972-08-15

西尾(司会) 本日はご多忙のところお集まり下さいましてたいへん有難く存じます。このテーマで座談会を開くについては,その主旨があるいは充分に諸先生に通じていないかとも思われますので,念のためこうなりました経緯をあらためて申し上げます。 実はこれには昨年急逝された江副先生が亡くなる少し前に「今度精神病院のあり方というような特集をしたら」という発言をされたことがあったそうなのです。私たまたまその席におりませんでしたが,亡くなられてから追悼文掲載などの話があったときに前述の江副発言が編集委員会で話題にのぼったのです。たまたま,なにしろ急逝でしたので追悼文についても,もっと何人かの人にお願いしたらというような緊急提案もあったのですが,あまり何人もの追悼文を入れてもかえって変則になるし,時機を見て江副言行録などを含めたなんらかの座談会などをやった方が有益ではないかということになり,そこで江副先生の生前の前述の提案が再び浮かび上がってまいりました。さて,そのような段階で,江副案をストレートに企画するかどうかという論議になり,結局現在の時点で「精神病院のあり方」の座談会の企画をする前に,すでにいくつかの断片的には出ています,現在までの精神病院のたどってきた経過を戦争を中心にしてまとめてみる方が先ではないかということになり,そこで表題のような変わった座談会をすることになった次第なのです。すでに昭和33年に江副・臺両氏が,昭和20年前後の松沢病院の情況報告を精神経誌に発表しておりますが,今回は松沢病院のみならず,もっと広く,そしてもっと多角的に話題を出していただくことを期待しているわけです。前に述べた江副先生の追悼文掲載などについて私も発言したりした関係上,今回の座談会の司会を私がさせられることになってしまいました。なにぶんよろしくお願い申し上げます。ご出席願った先生方は,イ)昭和20年より大分前から太平洋戦争を通して戦後混乱期あるいはその後まで精神病院で活躍されていた先生,ロ)戦争頃からおられた先生,ハ)戦後精神病院に行かれた先生方というえらび方を一つの建前といたしました。
著者
堀口 淳
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.1197-1201, 2019-10-15

抄録 通常のドパミン作動薬では症状が十分に緩和されていないむずむず脚症候群に人参養栄湯を追加投与し,1年間以上良好な治療効果を自覚している3症例を報告した。 人参養栄湯の追加投与の治療効果は,3症例とも投与開始後3週間から1か月目ごろから顕著となった。また症例3では,人参養栄湯を追加投与後,服用中であったドパミン作動薬を減量できた。 3症例の異常知覚は多彩であり,「むずむず」だけではなく,また症例2の異常知覚の発現部位は両上肢にも認められた。 本稿では,ドパミン作動薬と人参養栄湯との併用療法がむずむず脚症候群に奏功することと,むずむず脚症候群の異常感覚は多彩であり,また発現部位は「脚」だけではないことも強調した。
著者
野中 猛
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.29, no.7, pp.p725-733, 1987-07
被引用文献数
1
著者
織田 裕行 片上 哲也 山田 妃沙子
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.783-787, 2011-08
被引用文献数
1
著者
中塚 幹也
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.53, no.8, pp.769-774, 2011-08
被引用文献数
4