著者
松尾 光弘 坂本 美代 高砂 志織 本間 秀一朗 寺尾 寛行 小川 紹文
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.77-85, 2009 (Released:2009-07-08)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

ツユクサ科の一年生雑草であるマルバツユクサは,地上部および地下部にそれぞれ大きさの異なる大小2種類の種子を形成する。本研究では,南九州に発生した個体におけるそれら4種類の種子の発芽,出芽,生育およびそれらの種子から発生した個体の種子生産を比較した。  地上部あるいは地下部に形成された大型種子の発芽率は25°C∼40°Cで85%以上であり,発芽に要する平均日数は30°C∼40°Cで3日∼4日以内であった。また,斉一発芽係数は30°C∼35°Cで0.7∼1.1と最も大きな値を示した。小型種子の場合,地上部および地下部ともに発芽率は30°C∼35°Cで90%以上となり,発芽に要する平均日数は30°Cで約8日,35°C∼40°Cで約5日となって,大型種子よりも長くなる傾向にあった。また,小型種子の斉一発芽係数は35°Cで0.2∼0.5と最も大きな値となったが,数値は大型種子の半分以下であった。4種類の種子を自然条件下に播種した場合,地上部あるいは地下部に形成された大型種子から発生した個体の多くが3月∼5月に出芽したのに対して,小型種子の多くは4月∼9月に断続的に出芽した。また,それらの出芽深度は大型種子で0mm∼50mm,小型種子で0mm∼10mmであり,小型種子よりも大型種子由来の個体が土壌の深い場所から出芽した。完全展開した第1葉の葉長葉幅比は,いずれの種子から発生した個体においても約1.45であったが,葉幅は地下部大型種子>地上部大型種子>地下部小型種子>地上部小型種子由来の個体の順に有意に異なっていた。それぞれの種子から発生した個体の地上部における草丈,一次分枝数,葉数および生体重は同様の傾向に推移し,また地上部および地下部に形成された花序数あるいは大小の種子数についても,種子の形成位置と大きさによる有意差は認められなかった。以上の結果から,マルバツユクサに形成される4種類の種子,すなわち地上部あるいは地下部に形成された大型あるいは小型種子について,最適発芽温度,平均発芽日数,斉一発芽係数,出芽深度および出芽パターンは種子の大きさによって,また完全展開した第1葉の形態は種子の形成位置と大きさによって異なることが分かった。しかし,それら種子から発生した個体の生育,後の花芽形成あるいは種子生産については種子間に差異が認められなかった。