著者
川添 尭彬 末瀬 一彦 上田 直克 安田 俊冶 今西 俊雅 高田 秀秋 糸田 昌隆 札 束銘
出版者
大阪歯科学会
雑誌
歯科医学
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.378-402, 1994
被引用文献数
6

新たに開発された歯冠材料 (ハイブリッドセラミックス, HCC-4S) を用いて臨床試験を行った. 被験者は, 大阪歯科大学附属病院補綴科へ来院した患者47名 (男性10名, 女性37名) である. 修復部位は, 前歯が1歯, 小臼歯が22歯, 大臼歯が24歯で, 臨床経過を術前, 装着直後, 術後1週間, 術後3か月まで詳細に観察, 種々の評価を行い以下の結論を得た.<br> 1) 支台歯に対する評価では, 3症例に自発痛, 冷水反応, 打診痛が認められた. 1症例は, 術前から冷水反応が認められていたもので, 装着後消失した. 他の2症例については, 口腔内全体にわたる知覚過敏反応, 感染根管処置後の術後疼痛であった.<br> 2) 歯肉縁の状態については, クラウンの装着後改善されたものが多く, 増悪した症例はほとんどなかった.<br> 3) 摩耗については, 模型で認知できる咬耗はほとんどなく, シャイニングスポットが認められたものが2症例あった.<br> 4) 破折は3症例に認められたが, 2症例については試適中および仮着中に, 他の1症例のみ装着後に破折が生じた.<br> 5) 対合歯の咬耗は肉眼的に認められなかったが, 2症例にシャイニングスポットが認められた. 以上の結果から, ハイブリッドセラミックス, HCC-4Sは, 臼歯の咬合面を含む歯冠材料として有用で, 強度, 生体親和性および審美性において優れた歯冠材料であることが判明した.