著者
朴 寶美
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.211-226, 2013 (Released:2021-10-26)
参考文献数
24

勤労貧困層の所得支援と勤労意欲の向上のため2006年度に導入された韓国の勤労奨励税制は,12年現在,支給開始から4年が経過した。12年度改革は,特に所得基準額と最大受給額の拡大はもちろん,扶養子どもの人数などによる最大受給額が異なるようになるなど,最も大きな改革である。勤労奨励税制はその構造設計によって受給対象者と彼らの行動パターンが変化すると思われる。本稿は,このような勤労奨励税制の改革がどの程度の所得再分配効果をもたらすのかを,受給による労働時間の変化を考慮した検証を行っている。その結果,Phase-out区間で労働時間が減少する世帯が多かったものの全体的に労働供給が増え,労働供給を内生化すると更なる格差縮小効果が見られた。しかし,その幅は小さく,また給与所得額や扶養子どもの人数により労働供給の動きが異なるため,所得階級と子ども数ごとの格差縮小効果は全体的に見たときと異なる結果が得られる可能性も考えられる。