著者
杉原 伸幸 松崎 益徳 加藤 由紀子
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.29, no.5, pp.403-410, 1992
被引用文献数
1

目的: 高齢者において, 骨カルシウム代謝が非炎症性の大動脈弁石灰化 (AVC) に関与しているか否かを検討した.<br>方法: 70・80歳代高齢者 (男性49例, 女性140例, 81.0±4.4歳) を対象に, 断層心エコー図により僧帽弁輪石灰化 (MAC) (-) 群とAVC (-) (C群), MAC (-) のうちAVCが一冠尖石灰化群 (A1群), 二冠尖石灰化群 (A2群), 三冠尖石灰化群 (A3群), およびAVC (+) とMAC (+) 群 (AM群) の5群に分類した. 骨量は腰椎CT検査に骨量ファントム (中外製薬, B-MAS) を用い海綿部骨量 (BMC: mg/cm<sup>3</sup>) を計算した. 血液検査は血清カルシウム, 血清リン, 副甲状腺ホルモン, カルチトニン, オステオカルシンを測定した.<br>結果: 男性において, BMC値は群間に有意な差異をみなかった. 女性において, BMC値はA3群がA1, A2群に比べ低値であったが, A1, A2, A3群ともにC群との間に有意な差異がなかった. 一方, BMC値はAM群がC群に比べ, 有意に低値であった (C群48±35 vs AM群29±24mg/cm<sup>3</sup>; p<0.05). 血液結果は男女とも群間に有意な差異をみなかった.<br>結語: 高齢者でのAVCは, 男女ともMACと比べ骨粗鬆症との関連が弱く, 主に他の要因 (おそらく圧負荷やストレスなど) の関与が考えられ, 血液因子の明確な関与も証明されなかった.