著者
中野 聡子 藤田 哲二 小林 進 伊坪 喜八郎 杉坂 宏明 池上 雅博
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.57, no.8, pp.1988-1991, 1996

回腸とS状結腸に交通を認めた稀な管状型消化管重複症を経験したので報告する.<br> 症例は33歳,中国人の男性. 1995年2月9日,急に腹痛が出現し腹膜刺激症状を認め,腹部レントゲン上腸閉塞所見を呈し,手術を予定したが, 10数分の間に腹膜刺激症状は消失した.しかし,腸閉塞症状が改善せず,翌日手術を施行した.開腹時,回腸周囲に索状物を認め,ここに腸管が陥入し絞扼された状態になっていた.また,回腸とS状結腸の腸間膜対側で交通を認めた.手術は交通部の大腸を含めた小腸部分切除を行った.病理組織学的に,交通部は大腸粘膜で,周囲は平滑筋がとりまいていた.以上から, S状結腸の管状型重複症で,ここに潰瘍を形成し,回腸に穿通したものと考えられた.非特異的な経過または腹部所見を示す急性腹症では消化管重複症も念頭におくべき疾患の1つである.