著者
杉山 眞弓
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2016, no.26, pp.646-658, 2016

<p>ルイザ・メイ・オルコットは児童文学作家,家庭小説作家として知られているが,成人を対象とした,社会問題について考察した作品もある.そうした社会的な問題を扱った作品のひとつである,<i>Work: A Story of Experience</i> (1873) はオルコット自身の様々な仕事経験を通じて,仕事の価値を描いている.しかしながら,オルコットにとって主たる職業で,生計手段であったはずの仕事である「作家業」は<i>Work: A Story of Experience</i> において取り上げられていない.本研究はオルコットにとって「作家」という仕事が複雑な性質を持っていたことに焦点を当て,<i>Work: A Story of Experience</i> における「作家業」の不在の意味を分析するものである.この小説が人間にとって理想的な仕事像を描いたものであるにもかかわらず,作家という仕事はその複雑さゆえに理想の仕事として位置づけられなかったことを述べる.</p>