著者
伊藤 みちる
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.603-609, 2019-01-01 (Released:2020-01-24)
参考文献数
23

カリブ海地域におけるイスラム社会の規模は島々によってまちまちである.そのイスラム教徒は,大航海時代以降のヨーロッパ列強の新大陸植民地政策に関連し,世界各地からカリブ海地域に連れて来られた者たちが主流である.そのためカリブ海地域には,多文化,多民族・多人種が集まる,コスモポリンなイスラム社会が形成されている.そのイスラム社会は,21世紀のカリブ海地域においては拡大を続けている.その中で,急進的で過激な思想を持つイスラム教徒も出現しているが,カリブ海地域におけるイスラム教徒の多くは,キリスト教徒やヒンドゥー教徒などと,平等かつ重要な文化構成要素としての地位を築いている.
著者
小泉 恭子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.233-244, 2020-01-01 (Released:2020-04-09)
参考文献数
8

小論は,日本各地で近年増え続ける地方自治体や音楽ホールによるレコード鑑賞会が,地域の高齢者による,音楽という趣味を介したコミュニティとして創生されている状況に注目した.社会学のライフヒストリーの研究手法を用いながら,レコード鑑賞会の参加者の音楽聴取経験を解明して,歴史的・身体的な経験が公共圏でどう共有されていくかを論じた.レコード鑑賞会の参加者のタイプを3つに分け,そのうち第一のオーディオマニアへの聞き取り調査により,音楽でつながる趣味縁において,参加者同士が互いに承認関係を結んだり,地域貢献といった参加動機から社会関係資本の獲得へと活動を発展させたりする社会化の過程を明らかにした.
著者
森 功次
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.457-473, 2020-01-01 (Released:2020-07-15)

2015年のVOCA展に,コンセプチュアル・アーティストの奥村雄樹が作品を提出しようとしたところ,事務局側から出品を拒否された.本論はこの出品拒否事件をめぐってなされた奥村と事務局とのやりとりを読み解きながら,芸術作品のカテゴリーと作者性との関係を考察する試みである.作品の作者はどのようにして特定されるのか,また,作品の見方によって作者が変わることはありうるのか.こうした問いに対して本論は,作者性をめぐる近年の分析美学の議論を援用しながら「意図」や「責任」という観点から答え,最終的に作者の芸術的達成や責任を限定する一つの原理を提案する.それはすなわち,作品制作に複数の者が関わっている場合,あるカテゴリーにおいて一方の者に芸術的達成の責任を認めつつ,同時に同一カテゴリーにおいて別の者のみに作者性を付与することはできない,という原理である.
著者
陳 海涛
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.629-637, 2017-01-01 (Released:2020-04-02)
参考文献数
9

近年,日本語のフィラーについての研究は盛んになっている.しかし,中国語のフィラーについての研究は,断片的なもので,十分重視されていない.本稿では,コーパスを使用し,中国語指示詞系フィラー「这个」を研究対象をとし,その使用法を分類する.
著者
水谷 千代美 川之上 豊 平野 泰宏 土田 百恵 弘田 量二
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2017, no.27, pp.210-212, 2017-01-01 (Released:2020-04-02)
参考文献数
4

接触性皮膚炎患者とアトピー性皮膚炎患者に大別され,化学繊維製の衣服の着用した際に,かゆみ,湿疹,かぶれなどの症状に苦しんでいる.皮膚科医はアレルギー性皮膚炎患者に対して,ポリエステルのような化学繊維の着用を避けて綿繊維の着用を薦めている.しかし,医療機関は,なぜ綿繊維がよいのか実証されていない.本研究は,アレルギー性皮膚炎患者の皮膚の水分,油分,弾力および皮膚pHを健常者と比較し,皮膚の状態を把握した後に,アレルギー性皮膚炎患者に綿および二種類のポリエステル繊維を用いたアームカバーを装着し,繊維の違いが着用感およびかゆみなど皮膚に与える影響について調べた.その結果,かゆみは,汗に含まれるかゆみ成分であるヒスタミンが影響し,疎水性繊維であるポリエステルはヒスタミンを含んだ汗が表面に残り,ポリエステル繊維と皮膚が摩擦されることによってかゆみが発生しやすく,親水性繊維の綿は,汗を吸水するため,かゆみを抑えることができると考えられる.しかし,汗をかいていない場合は,布の曲げ硬さや表面特性が関係し,たとえ綿であっても硬い綿布は皮膚を刺激して不快感を与えることが分かった.
著者
阿部 和子 柴崎 正行 阿部 栄子 是澤 博昭 坪井 瞳 加藤 紫識
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.245-264, 2014 (Released:2015-01-31)
参考文献数
70
被引用文献数
1 1

本研究の目的は,「おんぶ」や「抱っこ」という身近な育児行為の変化とえじこ,子守帯,ベビーカー等の育児用品の変化と現状の検討を通して,近代日本における子育ての変化の過程を考察するものである.「おんぶ」は,子守や家事の必要性から生れた庶民の育児法であり,その起源は,平安時代にまでさかのぼる.それが明治以降わずか150年ほどの間に「労働のためのおんぶ」から「育児のための抱っこ」へ,日本人の子育てのスタイルが変化をとげた.また明治から昭和の初めにかけて,多くの人々にとっての育児用品は日用品の代替であった.だが第二次世界大戦後,特に,欧米の情報や文化が庶民レベルまで浸透し,普及しはじめる60年代に入り育児用品は家庭で作るモノから買うモノ(商品)へと変化する.モノの豊かさは,ある意味で親子の生活を便利にすると言える.一方,それらは自らの子育ての必要感から作りだされたモノではない.現在,他者から提供されるあふれるモノの中で,その使い方さえ教えてもらわなければならないという逆転現象を生んでいる.それがモノにたよる育児へと変化し,もはや商品化されたモノがないと育児が難しい状況である.子どもの成育環境の悪化が叫ばれる昨今,本研究で取り上げた諸事象は,一考すべき問題であろう.
著者
松村 茂樹
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.122-133, 2020

<p> 世界有数の美術館である米国のボストン美術館は,東洋美術の殿堂とも称せられる.その東洋美術コレクションが,1904年から亡くなる1913年まで在籍(1910年からは中国・日本美術部長)した岡倉天心(名は覚三,1862―1913)によって整備され,充実の度を加えたことは有名である.</p><p> 岡倉は,卓越した学識を具えていたが,漢学者というわけではなかった.だが,早年からの友人で,当時上海に住んで「中国最後の文人」たる呉昌碩(1844―1927)と深く交わった長尾雨山(1864―1942)に教示を請うなどして,漢学の造詣を深めた.</p><p> 筆者は,2015年4月より1年間,ボストン大学客員研究員としてボストンに滞在し,ボストン美術館で岡倉及び長尾の中国関連事業に関する資料調査をする機会に恵まれた.そして,中国・日本美術部の図書室で,当時購入された関係漢籍類226件を調査し,「ボストン美術館中国・日本美術部図書室所蔵漢籍目録抄」を作成して,その中に,岡倉の歿後,遺族から寄贈された旧蔵漢籍39件が含まれていることを確認した.</p><p> 本稿では,これら岡倉天心旧蔵漢籍を中心とするボストン美術館所蔵漢籍を紹介し,その分析を行いたい.このことにより,ボストン美術館を東洋美術の殿堂たらしめた岡倉の漢学造詣の本質を明らかにできると思われる.</p>
著者
髙田 祐里 小林 実夏
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.47-76, 2013 (Released:2013-02-08)
参考文献数
31

近年、米国を中心にフルクトース過剰摂取による健康への悪影響についての報告が論争を呼んでいる。日本では、厚生労働省の「2010年版日本人の食事摂取基準」において、初めてフルクトースの過剰摂取への警告がなされたが、食事摂取基準で数値を算定できるほど十分な科学的根拠は得られていない。その理由として、日本の食品成分表には糖類の成分値の記載がないため、単糖類、二糖類の摂取量を推定できないことが挙げられる。そこで本研究では、日本人の糖質摂取量の推定を目的として糖質成分表の開発を試みた。米国農務省(USDA)が作成した食品成分表には、ガラクトース・グルコース・フルクトース・ラクトース・スクロース・マルトースの成分表示がある。そこで、USDA食品成分表を用いて、日本食品標準成分表2010に収載されている食品の代替を行うことにした。USDA食品成分表に記載のない食品のうち、糖質総量が10g以上の食品を原材料に含むものについては、レシピを作成して原材料を代替し、100g当たりの重量に換算することで糖質総量を算出した。日本食品標準成分表2010には1878食品の記載があり、そのうち557食品の糖質成分表を作成した。日本食品標準成分表で、特に糖質を考慮すべき食品は250品(USDA食品成分表で糖質総量が10g以上の42食品を原材料に含むもの)あり、そのうち221食品(88.4%)を代替することができたため、日本人の糖質摂取量の推定が可能となった。本研究で開発した糖質成分表から推定された糖質摂取量の妥当性を、生体指標を用いて検証することができれば、日本人の糖質摂取量について多くの知見を得る可能性が示唆された。
著者
西河 正行 八城 薫 向井 敦子 古田 雅明 香月 菜々子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2015, no.25, pp.1-14, 2015 (Released:2015-03-27)
参考文献数
11

心理学教育を通して社会人基礎力を育成するキャリア教育を行うに当たり,社会・臨床心理学専攻に所属する全学生を対象に現行の心理学必修専門科目の教育効果について,学生のスキル習得認知,それに関連する心理学的特質等から,学生評価の学年比較を行った.その結果,本専攻が重視するジェネリック・スキルの認識に学生と教員で違いが見られ,また「前に踏み出す力」の育成に課題が認められた.学年比較からは,3年生に大きな特徴があり,「自尊心」が他学年より有意に低く,キャリア選択の動機づけにおいて「社会的安定希求」が有意に高かった.本結果に加え,他大学の教育実践の視察も踏まえた結果,3年後期に開講する新科目の授業内容は心理学教育を通して「前に踏み出す力」を身につけられるよう,①学生自身のキャリアについて考えさせる,②キャリアモデルを提示する,③内向的で受身的な学生に自信を与えるという3つの柱を導き出した.最後に,具体的な授業運営において,教育方法にPBL型授業を取り入れる可能性ならびにジェネリック・スキルについて学生と教員の間で共通の認識を持つ必要性を示唆した.
著者
大嶋 千尋
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2015, no.25, pp.245-248, 2015

<p> 「いじめの4類型」(公の場でのいじめ,物理的ないじめ,関係を利用したいじめ,陰でのいじめ)をもとに,いじめ加害者の特徴についての実証的研究を試みた.その結果,「公の場でのいじめ」を行ういじめ加害者は,親の養育態度の偏りがみられない家庭で育ち,問題行動を起こしがちで,生徒たちからも距離を取られてしまうような生徒ということがわかった.「陰でのいじめ」を行ういじめ加害者は,子どもに対して親からの関心が高いか低いかの二極性があり,周囲からの評価が低くて問題行動を起こすような子も,友人が多くて人気者で弱い子を助けるような良い子も存在することが明らかになった.「関係を利用したいじめ」を行ういじめ加害者の特徴は,大人の目に映るいじめ加害者の認識は様々だが,生徒からは近寄り難く,距離を置きたがるような認識であったことが分かった.本研究では,いじめ加害経験者に調査できず,心理的要因は検証できなかった.</p>
著者
小井土 守敏
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2021, no.31, pp.29-36, 2021

<p> 仮名本『曽我物語』の注釈作業の過程で、問題となる「馬芸」の描写に関する記述について、注釈の試案を提示する。併せて、『曽我物語』が、「弓馬の芸」について詳細な描写を指向していることを指摘する。</p>
著者
小井土 守敏
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.74-92, 2019-01-01 (Released:2020-01-24)
参考文献数
1

応仁の乱以降、秀吉による平定にいたるまでの伊勢国の争乱を描いた軍記物語『伊勢軍記』を翻刻し、略書誌を添えて紹介する。併せて、戦国期の伊勢国をめぐる軍記作品の書写環境について考察する。
著者
柴山 真琴 ビアルケ(當山) 千咲 高橋 登 池上 摩希子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.236-256, 2019

<p> 本研究では,小学校高学年児の国際児が,親の支援を受けながら現地校と補習校の宿題を遂行する過程で,どのような家族間調整がなされているのかを独日国際家族の事例に基づいて検討した.日本人母親が記録した約4 年間の日誌記録を「生態学的システム」の修正モデルを分析枠組みにして,家族間の調整過程を具体的に分析した結果,次の3 点が明らかになった.第一に,父母間では,対象児の学年に拘らず,自分が母語とする言語の宿題を支援する言語別役割分担を基本とする支援パターンが形成されていた.第二に,この言語別役割分担は,宿題をめぐる親子間調整の基本単位ともなっていた.現地校宿題をめぐる父子間調整は円滑に進んでいたが,補習校宿題をめぐる母子間調整では対立が頻発していた.第三に,対象児は,自分と活動(宿題遂行)との間に不具合が生じた時に,自らの環境認知に基づいて親に働きかけたり自らの行動を変化させたりする調整を行っていた.対象児の調整過程では,「役割期待」「時間展望」「目標構造」という3 つの軸が参照されていたと考えられる.</p>
著者
伊藤 みちる
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.28, pp.660-695, 2018-01-01 (Released:2019-07-26)
参考文献数
107

本稿は,旧英領カリブ海諸島におけるヨーロッパ系白人のアイデンティティとしての白人性の多様性に着目し,バルバドスとトリニダードを例に,白人性の違いやその特徴を探るものである.この課題は,フランス系トリニダード人の白人性構築の過程について探った拙稿 “Constructing and Reproducing Whiteness: An oral history of French Creoles in Trinidad” (2016) [1] と“French Creoles in Trinidad: Constructing and Reproducing Whiteness” (2006)[2] において,フランス系トリニダード人が他ヨーロッパ系白人と同一視されることが不本意であると強調していたことに端を発する.本稿では特に「ヨーロッパ系白人とは誰か」という問いを中心に,蓄積が少ないカリブ海地域の白人性に関する実態の一端を明らかにすることを目指した.そのため2016年8月と2017年2月にバルバドスとトリニダードを訪問し,ヨーロッパ系白人であると自己認識し,他者にも認識される者を対象にオーラル・ヒストリーの聞き取りを行った.本稿で引用した各島5名分の語りの分析から明らかになったのは,バルバドスのヨーロッパ系白人は自身の混血の事実を隠そうともせず,身体的特徴が許す限りバルバドス社会ではヨーロッパ系白人として認識され,ヨーロッパ白人として名乗れるということである.他方,白人としての純血性が重視されるトリニダードでは,ヨーロッパ系白人は自身の混血の可能性を否定し,異人種間結婚に嫌悪を示す者が多かった.バルバドス総人口の2.7%,トリニダードの総人口の0.7%しか存在しないヨーロッパ系白人が,今後も「白人」であり続けることは,特にこのグローバル化が進んだカリブ海地域では困難である.そのような状況下においてなぜヨーロッパ系白人としてのアイデンティティを強固に持ち続けるのか.それについては,後続研究としてヨーロッパ系白人と非ヨーロッパ系白人の交流に注視していきたい.
著者
鈴木 紀子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.258-276, 2013 (Released:2013-10-22)
参考文献数
21

1950年代に加速するアメリカの冷戦文化政策に,文学はどのような関わりを持ったのか.本論文は,戦後日本で広く名を馳せ,且つGHQや米国国務省の支援を受けた米文学作家-William Faulkner,Pearl Buck,Laura Wilder-とその作品に着目し,戦後アメリカが日本に対し行った「模範的民主国家アメリカ」の自己イメージ形成にこれら米文学作家・作品が果たした役割を考察する.一方日本人読者はどのようにその「アメリカ」を受容したのか.筆者は,日本人読者がアメリカを優越的他者として受容しながら,同時に文学に表象された,また作家自身が体現する「アメリカ」に日本文化との共通要素を積極的に見出そうとする解釈が見られる事に注目する.この独特な解釈には,戦後日本人がアメリカを「内側」に取り込み,自己として消化し,それを足掛かりにすることで形成しようとした新たなアイデンティティの一端を見ることが出来るのではないか.これらの考察を通し,本論文は,戦後冷戦初期に日米両国のナショナルな主体形成の一助を成した米文学の機能と,それを巡る両国間の相互依存関係を提示する.
著者
清水 沙也加 林 恵美子 若林 綾
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2014, no.24, pp.73-77, 2014 (Released:2014-05-30)
参考文献数
8

この研究の目的は,近代日本で文化的テクストが読者/オーディエンスによってどのように生産され,翻訳されていたかについて考察することである.とりわけ文化産業が発展した近現代では,文学テクストとメディアの関係はより錯綜し,多様な問題系を生み出している.文学テクストは,新聞や雑誌の記事の一つとして,美しくデザインされた本として,受け取られる.ときには,映画やマンガ,アニメーションに移植されることもある.そこに注目すると,文学テクストは,メディアや読者との協働を通じて,さまざまに変化していると言えるのだ.私たちは,資本主義と文化との関わりに注目しながら,メディアの中で作り上げられたイメージが,文学作品の受容にどんな影響を与えるかを検討した.
著者
安倍 希美
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究
巻号頁・発行日
vol.2019, no.29, pp.65-73, 2019

<p> 大和座の音羽屋三代目彦五郎は,戦後日本の再生を願い昭和21 年十六様と昭和25 年津谷木で,同じ三番叟を振り付け指導し,演者は共に井上晢男氏であった.津谷木で今でも継続されているこの三番叟を「彦五郎型」と改称する.百歳まで生きた石川竹次氏は,春日町屋台の修復の節目にお祝いの三番叟を演じ,また戦前も大和座の三枝健市氏の指導にて三番叟を演じていた可能性がある.飯田坂東彦五郎こと浅井宇市氏は,江戸で歌舞伎を修行したと言われ,洗練されたセンスと技の経験が「八井型」に生かされている可能性は大きい.今後,天王座の三番叟については天王座員が行っていた人形芝居等や,また神楽の動きを参考にすること等により,全般的に三番叟の理解が深まる可能性が考えられる.</p>
著者
井上 淳
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2018, no.28, pp.708-720, 2018-01-01 (Released:2019-07-26)
参考文献数
65

本論文は,既にEU研究に適用されながらもその問題点が指摘されてきた歴史的制度主義をEU(European Union)研究に活用することができるようにするために,歴史的制度主義アプローチの操作,修正を試みるものである. それまで停滞していたEU統合が1980年代半ばの域内市場統合計画によって息を吹き返すと,EUに対する理論的アプローチが発展した.歴史的制度主義はそのうちのひとつであり,EU諸機関が時間の経過とともに加盟国政府に影響を与えて,加盟国政府にさらなる制度化を選択させると主張してきた.しかしながら歴史的制度主義は,政府の国益や選好に関わる前提を競合理論であるリベラル政府間主義と共有したため,議論の上で大きな制約を抱えることになった.本論文はその制約を明らかにしたうえで,EU研究に適合するように歴史的制度主義を操作,修正する. 新たに操作を加えた歴史的制度主義は,加盟国による制度的選択が自国では解決することができない課題の「欧州的(集合的)解決」であること,それゆえに当該制度選択がゆくゆくは加盟国を拘束することを明らかにする.このような理解は,EU研究における歴史的制度主義に向けられてきた学術的批判にこたえてその問題点を克服するとともに,たとえばユーロ危機の顛末のように一度統合が停滞した後に再統合が進む理由やメカニズムを明らかにする可能性がある.
著者
井上 淳
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2020, no.30, pp.444-456, 2020-01-01 (Released:2020-09-12)
参考文献数
41

ギリシャに端を発する財政,債務危機で一部では崩壊まで懸念されたユーロだったが,現在は「真の経済通貨同盟へ」の標語のもと,それまで取り組まれてこなかった財政同盟や銀行同盟に向けた取り組みすら進んでいる.EUを分析する理論研究は,それぞれがそうした動向に対する説明能力をもつことを示すために,様々な論考を展開している.本論文は,そのうち,EU理論研究の一大学派を形成しておりEU統合を説明する「ベースライン」だと自らを位置づけているリベラル政府間主義(Liberal Intergovernmentalism)を取り上げ,その説明力を検証する. リベラル政府間主義は,危機後の取り組みがEU内の債権者であるドイツの国益,選好を反映したものであると議論している.ただ,多くの加盟国が参加する制度にかかる選択が特定加盟国のプロフィールで説明されるという結論は,リベラル政府間主義の特徴である選好形成,政府間交渉,制度選択という3段階のモデルを必要としない説明になりかねない.ドイツの意見が,リベラル政府間主義のいう「トランスアクション・コストが下がる」ものだと受け入れられた理由や背景を説明する必要がある.また,欧州中央銀行による国債買い入れ(OMT)決定のように,危機後の対策の全てがドイツの意見の反映ではない.こうしたリベラル政府間主義に見られる説明不足がその静的かつ短期の視座に起因するのであれば,考慮しなければならない問題である. そこで本論文は,経済通貨同盟の提案から今日に至るまでのEUの取り組みを概観した.歴代の経済通貨同盟に関する取り組みは,特定加盟国の国益の反映ではなく,その都度の制度選択は完全な解決でもなかった.経済通貨同盟には,経済や金融面でEUをリードしているドイツよりも,ドイツ・マルクを抑えて対称的な通貨関係を希求するフランスが積極的になっていた.ただ,その制度的なデザインは,フランスの選好,国益通りにはならなかった.それはドイツとて同じであり,各国の国益はそれぞれ部分的にしか反映・採用されていなかったのである. そのうえ,これまでのスネーク,欧州通貨制度,ユーロといった諸制度はいずれも「部分的」な解決,つまり未完成のまま徐々に進んできた.リベラル政府間主義は,この「部分的」あるいは「漸進的」にしか統合が行われていない事実,そしてその部分的な統合では各国の国益が単線的に反映されている訳ではないことを捉えなおすべきである. 初期の経済通貨同盟を実施する直前にこれが破綻したのも,フランスがスネーク(フロート)を離脱したのも,欧州通貨制度が当初不安定だったが1980年代に安定に転じたのも,ドラギ欧州中央銀行総裁がOMT決定にあたって意識したのも,いずれもドイツの通貨や経済政策を評価し,フランス(や危機後はギリシャなど)の通貨や経済評価を懸念する国際金融市場・投機の存在が鍵になっている.加盟国やEUの取り組みを評価する存在がいたからこそ,「部分的」に進められた統合がそれでよしとされることはなく次の危機を招き,加盟国がそれに取り組むことが求められた可能性がある.つまり,統合の進展を説明する際に,加盟国やEU(制度)だけでは説明できない何かを説明要因に加えねばならない可能性がある.今後の研究課題としたい.
著者
新堀 多賀子 初鹿 静江 髙波 嘉一 明渡 陽子
出版者
大妻女子大学人間生活文化研究所
雑誌
人間生活文化研究 (ISSN:21871930)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.23, pp.147-151, 2013 (Released:2013-06-14)
参考文献数
10

内臓脂肪過多は様々なサイトカインを介して動脈硬化性疾患を発生させる.BMIが標準でも体脂肪率が高い「隠れ肥満」学生への保健指導を行うため,内臓脂肪量を推定できるInBody装置を用いて「隠れ肥満」の背景にある生活因子を見出す事を目的とした.食物学科学生41名を対象に,InBody装置で体脂肪率,腹囲,BMI,内蔵肥満レベル等の測定とライフスタイルに関するアンケート調査を行った.体脂肪率により肥満,隠れ肥満,標準,痩せの4群に分け分析した.その結果,隠れ肥満はBMI標準範囲内の29%に認められた.隠れ肥満群は標準群より内臓脂肪レベル,腹囲,BMIで有意に高く,筋肉量が少ない傾向を示し,また小学生時代から現在までの運動量が少なかった.食事因子では,隠れ肥満群で果物類,肥満群で肉類,卵類の摂取頻度が高い傾向を示した.身体症状では,肥満群と隠れ肥満群で肩こりと頭痛が高い出現傾向を示した.肥満は隠れ肥満よりも睡眠障害が有意に高値だった.今回は症例数が少なく隠れ肥満と標準を区別するライフスタイル項目は運動因子以外見つからなかった.