- 著者
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中野 和彦
杉本 太造
平沼 謙二
蛭川 登夫
- 出版者
- 愛知学院大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1993
サクソフォン、クラリネットなどの木管楽器吹奏時には、下顎前歯と楽器のマウスピースの間に下唇を巻き込むため、大多数の奏者では、長時間の演奏を行うと下唇に前歯の圧痕ができ、しばしば疼痛が生じる。また、裂傷が発生する場合もある。このため、下顎前歯部の切縁と下唇の間に紙やビニールなどを介在させ吹奏するもの、市販の保護材料で保護するもの、また少数であるが歯科医の製作によるリップシールドを使用している奏者などがいる。このリップシールドは下顎前歯を被覆する形態であり、歯列の不整を一時的に修正した形状となるため、音程が取りやすい、音色が良くなる、高音がでやすくなるなどの副次的な効果も報告されている。しかし、その形状・材質について研究・報告されたものはない。本研究は、このリップシールドの形状・材質とその音響学的影響について検討し、さらに下顎位の状態などより有効な条件を抽出・解明して理想的なリップシールドを開発することを目的とした。実験方法は、種々の形態と材質によりリップシールドを作製し、使用時の吹奏者(音の立ち上がり時・一定音になっているとき)を、楽器に取付けた加速度ピックアップを通して、アンプで増幅した後、FFTアナライザーに入力した。それをパワースペクトルに変更して、解析し有効なものの抽出を行った。その結果、形状では下顎切歯切縁上部中央がやや盛り上がったいわゆる「中野式リップシールド」では、疼痛は軽減され、奏者自身の吹奏感もよく、客観的にみても音色は向上し、音色の安定性が増した。材質では、歯科用レジンで作製したものが、他のものより、音色の向上と安定性が増加することが認められたので、リップシールドの形態、材質について有効な指標が得られた。