著者
久保 森 杉村 暢大 中桐 紘治 秋田 求 泉井 桂
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.162-170, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
16
被引用文献数
1

ホルムアルデヒド(HCHO)は重要な産業用化学物質であるが,大気や室内の環境汚染物質でもあり,化学物質過敏症やシックハウス症候群の原因物質の一つとされている.われわれは,先に,HCHOを固定して同化する酵素群の遺伝子をメチロトローフ細菌から取得し,これを導入することによって,植物にHCHOの同化能を付与することに成功した.この方法を観葉植物などに適用して環境浄化(ファイトレメディエーション)に役立てることができるかどうかを検討するためには,遺伝子導入によって付与されたHCHOの吸収能やHCHOへの耐性について,より定量的なデータが必要とされる.本論文においては,一定の湿度を保ちながら,種々の濃度のガス状HCHOに植物を曝露するためのシステムの作成とその性能について報告した.予備試験的に,このシステムを用いてシロイヌナズナの野生型および上記の形質転換体をHCHOに曝露したときの可視的影響を観察した.両植物体ともに,1~2 ppmにて48時間の曝露では葉に可視的な傷害がみられ,14~16 ppmで4日間の曝露では成葉が全面的に褐変した.しかし曝露後通常大気中で栽培をつづけると茎頂から成長が再開され死滅はしていなかった.