著者
村上 賢治 井戸 睦己 桝田 正治
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.284-289, 2006 (Released:2008-04-02)
参考文献数
14
被引用文献数
3 14

シシトウの閉鎖人工照明栽培における果実の辛味低減を目的とし, 暗期挿入および暗期低温の効果について検討した.通常の栽培では辛味を生じないシシトウ‘ししほまれ’を供試し, 植物体上部での光強度が15~350 μmolm-2s-1 になるように白色蛍光灯を用いて照明し, CO2濃度を800 ppmに制御した人工気象器内で栽培した. 明暗サイクルを連続照明および6時間暗期挿入, 暗期の温度を28, 20, 16℃とした. 明期の温度はいずれも28℃とした. 収穫果実の胎座組織からカプサイシンをメタノールで抽出し, 高速液体クロマトグラフにより測定した.食味試験の結果, 強い辛味が感じられなかった果実における胎座のカプサイシン濃度は, いずれも50 mg/100 gDW以下であった. 自然光・自然日長栽培株の果実は, 90%がその範囲内にあった.自然光+電照により24 時間日長とすると, 果実のカプサイシン濃度はやや上昇した. 人工気象器内で連続照明・28℃一定で栽培すると, カプサイシン濃度が著しく上昇し, 90%の果実が50 mg/100 gDW 以上であり, 60%の果実が500 mg/100 gDW 以上の高い値を示した. 6時間の暗期を挿入すると,カプサイシン濃度が減少し, 50 mg/100 gDW 以上の果実の割合が約60%, 500 mg/100 gDW の果実の割合が20% になった.さらに, 暗期の温度を16℃に下げると, カプサイシン濃度がさらに減少し, 50%以上の果実が50 mg/100 gDW 以下の値を示した. 果実当たり種子数とカプサイシン含量の関係を調べた結果, 両者には負の相関があり, 種子数が40個以上と多い果実はすべてカプサイシン含量が低かった. また, 温度が28℃一定の場合, カプサイシンの濃度が高く, 果実当たりの種子数が少なかった. これらのことから, 種子形成とカプサイシン生成との関係が示唆された.本研究の結果, 人工気象器内で連続光・28℃一定下でシシトウ果実に生じる強い辛味は, 暗期挿入と暗期低温で低減しうることが示された.
著者
桝田 正治 吉田 裕一 村上 賢治 浜田 優子 向阪 信一
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.254-260, 2000-12-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
26
被引用文献数
4 4

本研究は, 閉鎖系連続光下におけるピーマン'京みどり'の果実生産における炭酸ガス施与の効果について調査したものである.栽培環境条件は, 蛍光灯連続光の光強度150μmol m-2 s-1, 気温27±2℃, 湿度70±5%, 炭酸ガス濃度は自然 (340ppm), 800, 1200, 1600ppmとした.播種約45日後に第1番花が開花し, その時点から炭酸ガス施与を開始した.開始後72日間の収穫果数 (20~25gで収穫) はCO2自然区で個体当たり57果, 800~1600ppm制御区では80~90果となり, 自然区に比べて制御区で有意に増加した.CO2濃度の制御区間には有意差は認められなかった.地上部の全乾物重に占める果実乾物重の割合は, いずれの試験区でも40%以上を示した.生育は, すこぶる旺盛で節間は2~3cmと極めて短く葉色も濃緑であったが, 炭酸ガス施与開始2か月後には, 1200ppmと1600ppm区において軽微な葉脈間クロロシスが観察された.長期栽培でのCO2施与は, クロロシスが発生せず収量の向上が期待できる濃度800ppm程度が適当であると推察された.なお, 果実品質について自然光ガラス温室での同栽培法による6月の収穫果実と比較したところ, 連続光下の果実は乾物当たりのデンプン含有率は低いが, 糖含有率には差がなく, 果皮が硬く, 緑色濃く, つやの強い点が特徴的であった.
著者
佐々木 和哉 与語 健太郎 山口 堅三 齊戸 美弘 福田 光男
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.152-158, 2011-12-01 (Released:2011-12-01)
参考文献数
14

モロヘイヤの葉中に含まれるビタミンB2を非破壊かつリアルタイムで検出することを目的として, UV-LED光をモロヘイヤに照射し, モロヘイヤから発生する蛍光観測可能な光学系を構築した. その結果として, 以下の結果を得た. 本測定法では, モロヘイヤから蛍光観察に要した時間は, 500 msであり, 従来の破壊検査法であるクロマトグラフィー法(数分から数十分)と比較しても非常に短時間の測定である. 本光学系では, リアルタイム計測も可能である. 1.モロヘイヤからの蛍光スペクトルで, 波長530 nmにピークを持つビタミンB2由来の蛍光を観測した. 2.紫外線障害が生じない励起光強度で最大の強度を320 μW mm-2と求め, 当該強度においても, 波長530 nmに蛍光ピークを持つ蛍光スペクトルを観測した. 以上のことから, 紫外光をモロヘイヤに照射することで, 生育過程中のモロヘイヤから非破壊かつリアルタイムでビタミンB2の検出を行えることを示した.
著者
Baofeng SU Noboru NOGUCHI
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
Environmental Control in Biology (ISSN:1880554X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.277-287, 2012 (Released:2012-10-30)
参考文献数
19
被引用文献数
1 3

The availability of agricultural land use information allows decision makers and managers to establish short-term and to long-term plans for land conservation and sustainable use. The objective of this study was to develop a method for extraction of agricultural land use information based on remote sensing imagery. By combining particle swarm optimization (PSO), k-means clustering algorithm and minimum distance classifier, a PSO-k-means-based minimum distance classifier for agricultural land use classification was developed. Crop planting information was collected and divided into five classes: water bodies, paddy fields, bean fields, wheat fields and others (windbreak, roads, rare areas, and buildings, etc.). K-means, a widely used algorithm in pattern recognition for unsupervised classification, became a part of supervised classification by using PSO to find the optimal initial position vectors in a training sample pretreatment process. The optimal cluster of each subclass was finally used for minimum distance classification. The results obtained from Miyajimanuma wetland land use information extraction showed that merely using a small feature space composed of the first three principal components of a SPOT 5 image enabled classification accuracy of 93%.
著者
石神 靖弘 後藤 英司
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.228-235, 2008-12-01 (Released:2009-09-04)
参考文献数
24
被引用文献数
2 2

In order to achieve plant production in a closed ecological life support system (CELSS) in space, environmental control is a key technology because the environment is completely artificial. One advantage of the CELSS in space is that each module's gas composition and total pressure can be regulated at an optimal level. For example, the nitrogen contained in air is not necessary for plant growth, and low oxygen concentration may enhance net photosynthesis by reducing photorespiration. Hypobaric conditions, obtained by reducing nitrogen and oxygen concentrations, could facilitate gas control, reduce construction costs, and simplify maintenance of modules on a lunar base and in plant production systems on Mars. This review summarizes previous papers and evaluates significant effects of total pressure on growth and development of higher plants, especially crops. Previous studies showed that photosynthesis and transpiration of plants were enhanced under low total pressures because gas diffusion rates increase at low total pressures. Spinach and lettuce in vegetative stages can grow normally under 25 to 50 kPa total pressures. Seeds of rice and Arabidopsis thaliana germinated at 25 kPa total pressure. Flowering was normal in Arabidopsis under hypobaric conditions. Seed growth of soybean and Arabidopsis under low total pressures with a low O2 partial pressure was greater than under the atmospheric pressure with the same O2 partial pressure. This indicates that O2 concentrations inside siliques were maintained higher by the higher diffusion rates prevailing under hypobaric conditions. The results indicate that if total and partial pressures are controlled precisely, plants can grow normally in their life cycle from germination to harvest under hypobaric conditions.
著者
広間 達夫 伊藤 菊一 原 道宏 鳥巣 諒
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.52-58, 2011-06-01 (Released:2011-06-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

発熱期のハスの体温調節機構を解析するために, ハスを鉢栽培し, 屋外で開花開始から種子結実終了までのハスの花托体温と気温の関係を調べる屋外実験を実施した. 同時に, 発熱期および無発熱期のハスを恒温槽に入れ槽内温度を階段関数的に変化させそのときの花托体温のステップ応答を測定する屋内実験を実施した. (i)これら屋外と屋内の2実験において, 周囲気温を入力, そのときの花托体温を出力とする入出力関係を伝達関数で表現した. (ii)他方, 屋外実験(太陽光による一種の周波数応答実験)の解析を行い, 自然環境下の発熱期のハスが気温の変動を組み込んで自己の花托体温を決定するというハスの体温調節モデルを導出した. (iii)最後に, iとiiの結果に制御理論を適用して, ハスの体温制御機構を総合的に検討した. 得られた主な結果は以下の通りである.(1)発熱期のハスは, ある種の体内温度計を内臓し, これと時々刻々変動する気温の影響の和を目標値とする, 可変目標値モデル提案した.(2)発熱の活性化の程度は活性化係数で表すことができ, 発熱はステージ2の場合が, 最も活性化係数が大きくて発熱活動が最も盛んであることを確認した.(3)ハスの花托体温と気温依存温度の差は発熱相当温度であり, 花托は発熱相当温度分の熱産生を行って体温を気温より高温に保っていると考えられる.(4)ハスの体温制御系は, 発熱期の花托体温をフィードバックし可変目標値との偏差を制御器に導くという制御機構で表すことができる.(5)気温からハス花托に至る伝達関数は一次遅れ系で, 発熱期の制御器は積分動作で表現することができる.
著者
松本 恵子 多田 雄一 清水 浩 澁澤 栄
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.79-85, 2009-06-01 (Released:2009-09-04)
参考文献数
36
被引用文献数
4 3

カイワレダイコン(Raphanus sativus L. ‘Kaiwaredaikon (Japanese radish sprout)’)の生育および抗酸化活性に与える給水量の影響について検討した.3水準の給水量すなわち300 ml,500 ml,700 ml(栽培試験終了時の土壌含水率はそれぞれ60%,70%,80%)の試験区を設定し,カイワレダイコンを栽培した.そして,それぞれの試験区における胚軸長,新鮮重,含水率,新鮮重1gあたりの抗酸化活性,総ポリフェノール含量を測定した.その結果,給水量が少ない区ほど胚軸長は短くなり,新鮮重および含水率は低下した.一方,新鮮重1gあたりの抗酸化活性は上昇し総ポリフェノール含量も増大した.また,新鮮重1gあたりの抗酸化活性と新鮮重1gあたりの総ポリフェノール含量との間には正の相関があることが認められ,給水量が少なくなるにつれてカイワレダイコンの新鮮重1gあたりの抗酸化活性が増大したのは,新鮮重1gあたりの総ポリフェノール類含量が増したためであることが示唆された.本研究により,給水量を制限して栽培することは,カイワレダイコンの新鮮重1gあたりの抗酸化活性を高めることに有効であることが明らかとなった.
著者
松山 正彦 寺澤 泰 沢田 恭彦 堀部 和雄
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.89-98, 1996-06-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
10

植物生産環境システムの具体例として, コンピュータや環境制御機器で管理されてきたきのこ工場をとりあげた.近年のきのこ工場は, 1サイクルあたり約220万本の栽培瓶を用いて, 年間1千トンクラスのブナシメジを生産する企業参入型もみられ, 特に経済性分析が重要である.きのこ工場で必要となる設備・機械の経費と栽培瓶数の関係は, 区間回帰モデルで表すとlnC (Qp) = (0.976, 0.122) + (0.600, 0.042) lnQpとなる.これを図1に示した.供試きのこ工場では年間の栽培瓶数は45万本で, このとき必要な施設・設備・機械の例を表2に準必需品を表3に示したが, 初期投資額は1億1250万円となる.この場合の費用配分は表4に, 電力を使用する主な機械と消費電力量を表5に示した.ここで瓶1本あたりの収穫量にファジィ数 (g) をもちいれぼ (102,160,214) と表わせる.この時の労務費は表4に, おもな従業員の1日あたりの労働時間は表6に示した.1時間あたりに120パック処理され従業員の時間給は700円とすれば, ブナシメジを生産するきのこ工場の必要経費 (万円) は (3862, 4226, 4566) となる.したがって, 100グラムあたりの生産原価 (円) は (40.1, 58.7, 99.5) と表すことができた.
著者
畑 直樹 桝田 正治 小林 昭雄 村中 俊哉 岡澤 敦司 村上 賢治
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.93-100, 2011-09-01 (Released:2011-09-01)
参考文献数
63
被引用文献数
1 2

Altered growth habits and leaf injuries occurring under continuous light are comprehensively reviewed for Solanaceae and Cucurbitaceae crops. Continuous light can accelerate growth by providing a high daily light integral, but many species and cultivars develop leaf injuries and abnormal growth. Other environmental factors may alter responses to continuous light.
著者
中村 謙治 森川 信也 山崎 基嘉 磯部 武志
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.182-188, 2007-12-01 (Released:2009-01-14)
参考文献数
9

湛液型水耕栽培ベッドと飼育水槽を組み合わせ, ポンプにより飼育·栽培用水が常時循環する野菜栽培と魚類育成の複合生産システムを供試し, 果菜と淡水魚の複合生産の可能性を検討した. 実験はトマトとティラピアを組み合せたシステム, 水ナスとコイ, ヘラブナを組み合わせたシステムについて行った. 飼育·栽培用水に養液栽培用肥料を添加する条件では, 果菜の収量は魚を飼育しない場合に対し同等以上の収量が得られ, 飼育魚は水耕栽培用の培養液中でも順調に生育した. 以上から, 養液栽培システムに魚類育成用タンクを追加するだけの簡易なシステムにより, 果菜類の栽培と淡水魚類の生産が両立できる可能性が示された.
著者
梅田 知季 宮崎 肇 山本 愛 彌冨 道男 山口 雅篤 松添 直隆
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.193-199, 2006 (Released:2007-10-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

ナス(Solanum melongena L.)果皮の色素細胞の分布およびアントシアニンの存在様式と果実の光環境との関係を調べるために,暗黒処理を施した果実を顕微鏡で観察した.ナス果実の着色と光環境との関係は品種・系統間で異なり,果実に暗黒処理を行うと全く着色しない光感受型,着色への影響が少ない非光感受型,着色は低下するがある程度の着色がみられる中間型の3タイプに分類できた.光感受型の品種では,対照区(無被覆)で果皮に色素細胞がみられたが,暗黒区では全くみられなかった.非光感受型の品種では対照区,暗黒区とも色素細胞がみられた.中間型の品種では,対照区で色素細胞がみられたが,暗黒区では色素細胞と全く着色がみられない細胞が混在していた.このことから,光感受型では全ての細胞,中間型では一部の細胞において,アントシアニン生成経路に光が必要であることが明らかになった.従って,ナスの果色は,細胞内のアントシアニン量と果皮組織の色素細胞の分布(密度)量に影響すると考えられた.果皮の色素細胞中のアントシアニン様液胞内含有物(AVIs)は主要色素がナスニン(delphinidin 3 -p-coumaroylrhamnosylglucoside-5-glucoside)である品種・系統に特異的に観察された.また,AVIsの存在は果色に大きく影響することが示された.
著者
松添 直隆 川信 修治 松本 幸子 木村 宏和 圖師 一文
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.115-122, 2006 (Released:2007-06-01)
参考文献数
26
被引用文献数
8 4

人工気象器でイチゴ(品種:‘とよのか’と‘女峰’)を栽培し,イチゴの果実成分に与える夜温の影響を調べた.果実の成熟日数は23/10℃(昼間/夜間)で最も長く,23/20℃で最も短かった.果重は夜温が高いと減少した.糖含量は23/20℃で有意に少なかった.有機酸含量は,‘とよのか’では処理間差がなかったが,‘女峰’では夜温が高いと増加する傾向にあった.また,糖酸比は両品種ともに23/20℃で非常に小さくなった.全アミノ酸含量は品種間差が認められた.夜温の影響は各アミノ酸により異なり,アスパラギン,グルタミン酸およびアラニンでは23/10に比べ23/20で低くかった.還元型アスコルビン酸は夜温の上昇に伴い低下したが,酸化型アスコルビン酸は夜温による差異がなかった.アントシアニン含量は夜温が高くなると増加した.また,アントシアニンの構成比には夜温の影響はなかった.エラグ酸含量は23/10℃に比べ23/20℃で高かった.また,夜温の上昇によるエラグ酸含量の増加は,‘とよのか’に比べ‘女峰’で大きかった.
著者
坪田 将吾 山本 聡史 手島 司 林 茂彦
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.152-161, 2015-09-01 (Released:2015-09-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

イチゴの循環式移動栽培における果実計数を目指し,栽培ベッドの横移送中に取得した画像を基に,赤色果実および未熟果実の計数を行うベッド移動型果実撮影装置を試作した.また,計数処理を行うアルゴリズムとしてRGB + TOF処理を開発し,RGB処理による果実計数との比較を行った結果,以下の知見が得られた.1)RGBカメラおよびTOFセンサの光軸を栽培ベッドの移動方向と平行に配置し,ラインスキャンによって画像を取得したことで光軸がほぼ重なり,カメラごとの内部パラメータの違いを補正することなく,RGB画像と距離画像をアフィン変換のみにより高精度に対応付けすることができた.2)模型果実を用いた果実の重なり分離試験において,果頂部の高さの差が20 mm以上のとき,果実の重なりが大きく粒子解析手法では果実の分離が困難な果実の中心軸間距離が30 mm以上の場合でも,距離情報を用いることにより分離可能であった.3)赤色果実を計数する性能を検証した結果,「あまおとめ」に対するRGB + TOF処理で96.8 %,RGB処理で90.3 %であった.「紅ほっぺ」でも,RGB + TOF処理で94.7 %,RGB処理で74.3 %となり,距離情報により重なった果実を分離することで,高精度な果実の計数が可能となった.しかし,距離情報による果実分離では,TOFセンサからの距離が近い果頂部周辺を一つの果実として認識し,1つの果実を分割してしまうことがあり,誤検出数が増加した.4)未熟果実を計数する性能を検証した結果,「あまおとめ」に対する計数成功率は,RGB + TOF処理で69.6 %,RGB処理で70.9 %であった.また,「紅ほっぺ」でも,RGB + TOF処理で71.2 %,RGB処理で72.6 %となり,距離情報を組み合わせることによる精度向上は見られなかった.しかし,高い位置に着花する花等を距離情報を用いて除去することができ,誤検出数が削減できることが明らかになった.
著者
浅尾 俊樹
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物環境工学 (ISSN:18802028)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.15-18, 2013-03-01 (Released:2013-03-01)
参考文献数
4
被引用文献数
1

島根大学における植物工場の研究拠点を示した. その中心となる「島根大学植物工場支援·研究施設」の概要を紹介した. さらに, そこで展開する学術的課題と, 人材育成·研修について報告した. なお, 問い合わせ連絡先も示した.
著者
Satoshi YAMAMOTO Shigehiko HAYASHI Shogo TSUBOTA
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
Environmental Control in Biology (ISSN:1880554X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.49-53, 2015 (Released:2015-06-17)
参考文献数
7
被引用文献数
8

The movable bench cultivation system is a method of increasing area productivity and minimizing the energy needed in a greenhouse. In the system, all plants pass through the same watering point every day. This point should thus be the ideal place to measure precise plant growth information. In this study, we construct an experimental system for a 3D measurement of a community of strawberries cultivated on a 1-meter-long bench. The measurement was made every two to seven days from October 23, 2013 to January 13, 2014. As a result, we obtained 31 images of 10 plant beds. The estimation error of maximum plant height ranged from −30 mm to 32 mm, and that of width ranged from −42 mm to 40 mm. To visualize the growth information effectively, a 2D histogram of the distribution of the 3D points of the plant community was also calculated.
著者
Masanori TAMAOKI Tohru YABE Jun FURUKAWA Mirai WATANABE Kosuke IKEDA Izumi YASUTANI Toru NISHIZAWA
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
Environmental Control in Biology (ISSN:1880554X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.65-69, 2016 (Released:2016-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
10

Sixteen plant species were tested for their potential to remove radioactive cesium from contaminated soil with the Fukushima Daiichi nuclear disaster. There was a large difference of transfer factor (TF) of radiocesium (137Cs) from the soil to plants. Among the examined plants, Hollyhock belonging to Malvaceae showed the highest TF but the efficiency of phytoremediation, such as total 137Cs absorption of a plant or 137Cs removal from unit area, was not proportionally high. According to the evaluation criteria (uptake of 137Cs per plant and/or area), Kochia was shown to be the best plant species among 16 plants investigated here. Analysis of correlation showed that there was positive relationship between the total 137Cs absorption and plant biomass, and contribution rate of plant biomass in total 137Cs uptake by plant was scored to be 91.3%. These results indicate that selection of plant species that shows high biomass on site is important for 137Cs-targeted phytoremediation rather than the plants’ ability in 137Cs-uptake. On the other hand, our results also suggested that the TF value should be considered in order to evaluate the plant ability for 137Cs-targeted phytoremediation. From this point of view, the present study suggests that field-grown Kochia could be used as a potential candidate plant for phytoremediation of 137Cs from soil.
著者
狩野 敦 内藤 雅拓
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.137-142, 2001-06-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
6

本研究において製作したチャンバを用いて光合成速度が小さいコチョウランのCO2吸収速度の日変化を明確に測定することができた.暗期の気温を25℃とし,明期の気温を20,25,30℃とした場合,明期の気温が低いほど明期のCO2,吸収速度は大きくなったが,暗期のCO2吸収速度に差はなかった.一方,明期の気温を25℃として暗期の気温を20,25,30℃とした時のコチョウランのCO2吸収速度は,明期においては暗期の気温に関わらず処理間に差は認められなかったが,暗期においては気温が低いほど大きく推移した.これらの結果の原因について生理学的な検討を試みた.CO2吸収速度が20℃で最大であったのに対して,成長速度が一般に,より高温域に適温を持つといわれていることについて考察を試みた.本研究によって,コチョウランのCO2吸収パターンに詳細な検討が可能になったと考えられるが,さらなる理解のためには考察中に述べたような生理プロセス方面からの研究も必要だと考える.
著者
松村 博行 尾関 健
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場学会誌 (ISSN:09186638)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.21-26, 1998-03-01 (Released:2011-03-02)
参考文献数
20
被引用文献数
2 3

本報はカキ栽培の収益性向上のため, コンテナ栽培による樹高の制限, 樹の個体差の抑制および収量の増加を目指し, 適合品種, 用土の種類および容量について検討した結果, 以下の所見を得た.1'前川次郎'は, 成園化が早く, 樹高が2.5m以下の低樹高で, 樹に均一性があり, 平均果重340g, 糖度18%の高品質な果実を1樹当たり4kg収穫でき, 果実の軟化を引き起こすヘタスキがなく, 市場評価が高いのでカキのコンテナ栽培に適する.2カキのコンテナ栽培には, 再現性および樹の生育と収量から川砂および有機質と無機質を用いた混合用土が適当であるが, 価格からは川砂が最も安価で, 実用性が高いと考えられる.3カキのコンテナ栽培に用いる川砂の容量は, 樹の生育や果実品質の面から40l以上は必要であるが, コンテナの操作作業性や移動性を考慮すると40lが適当である.
著者
山崎 肯哉
出版者
日本生物環境工学会
雑誌
植物工場 (ISSN:18845312)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.25-31, 1990 (Released:2011-03-02)
参考文献数
8