- 著者
-
杉浦 一充
- 出版者
- 公益社団法人 日本薬理学会
- 雑誌
- 日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
- 巻号頁・発行日
- vol.146, no.5, pp.252-255, 2015 (Released:2015-11-11)
- 参考文献数
- 13
汎発性膿疱性乾癬は指定難病である.急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し,無菌性膿疱が多発する.ときに内臓病変を合併し,治療に難渋し死に至ることもある.誘発因子は上気道感染,抗生剤などの薬剤,妊娠などである.従来,汎発性膿疱性乾癬の病因は不明であったが,近年著者らにより,「尋常性乾癬を伴わない汎発性膿疱性乾癬は大半がIL36RN遺伝子変異によるIL-36RN機能欠損を背景とした疾患である」ことが,また,基本的には常染色体劣性遺伝型式を背景とするが,ときにはヘテロ接合体変異を背景としても発症することが解明された.2015年度から難病の特定疾患調査表にも,IL36RN遺伝子変異解析結果を記載する欄が新たに設けられた.汎発性膿疱性乾癬の類縁疾患で,妊婦に発症する重症の膿疱症である,疱疹状膿痂疹の大半の症例でもIL36RN遺伝子変異が関連する可能性がある.同様に汎発性膿疱性乾癬との鑑別が時に困難である,重症薬疹の1つの病型である急性汎発性発疹性膿疱症の一部の症例にもIL36RN遺伝子変異があることもわかってきた.IL36RN遺伝子ヘテロ接合体変異は日本人の2%弱が保有していることから,IL36RN遺伝子変異の関連する膿疱症は実際にはかなりの多症例数であることが予測される.汎発性膿疱性乾癬のみならず,疱疹状膿痂疹や急性汎発性発疹性膿疱症などの全身性の膿疱症では早期診断早期治療介入,あるいは病因検索と誘発因子回避の指導のために,IL36RN遺伝子変異解析を実施すべきである.IL-36RN欠損症による膿疱症の治療標的はIL-36受容体ならびにそのアゴニストであるIL-36α,IL-36βおよびIL-36γであることは明白なので,今後の根本的治療薬の開発が大いに期待されている.