著者
杉瀬 康仁 川崎 聡大
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.21-24, 2014-05

本県の通級指導教室は、平成5年に情緒障害教室が3教室設置されたところからスタートし、翌年以降は言語障害教室が順次設置されていったが、その多くは既存の言語障害特殊学級が通級制へ移行した教室であった。ところが、平成18年の制度改正により学習障害教室の設置が可能となったことから、その後教室数・児童数ともに急増することになった。本県の通級指導教室の特色として、一人の教師が複数の教室を兼務(巡回指導)するというシステムがある。すべての教室がこれに当てはまる訳ではないが、このことが平成24年度末で、小学校数199校の富山県に、104の通級指導教室が設置され、841名の子どもたちが個に応じた指導を受けるという結果につながっていると考えられる。一方、富山市の担当者へのアンケートからは、教室を担当するに当たり、その専門性をもつのに十分な公的研修を保証されていないことや、指導を行うべき教室(場所という意味で)が確保されていなかったり、教材教具を準備するための予算措置がなされていなかったり等、研修や運営に関する不備を指摘する意見が多く集まった。このような状況を考えると、ただ教室数のみを増やすのではなく、指導を受ける子どもたちの教育環境を人的、物的に整えていくことが必要であると考えられる。