- 著者
-
杉田 篤生
稲富 久人
藤本 直浩
- 出版者
- 産業医科大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1990
1.ヒトにおけるPlasma Fibronectin(pFN)の測定。正常人24名、尿路悪性腫瘍患者61名において免疫比濁法によるpFN値の測定を行った。1)治療前におけるpFN値。正常人のpFN値は、平均379μg/ml、患者群では、356μg/mlであり、有意差を認めなかった。転移の有無によってもpFN値に有意差を認めなかった。予後良好群と不良群では、各々410μg/ml、300μg/mlであり、有意差を認めた。2)保存的治療中の患者群におけるpFN値。腫瘍の進行が遅い群と速い群におけるpFN値は、各々372μg/ml、287μg/mlであり、有意差を認めた。よって、pFN値と腫瘍の進行、予後との関連性が示唆された。3)各種治療に於けるpFN値の変動。化学療法中は7例中3例でpFN値の低下(50〜180μg/ml)を認めた。少数例ではあるが、温熱療法、放射線療法、IFN療法では変動はみられなかった。2.担癌マウスにおけるpFN値。移行上皮癌、腎細胞癌、乳癌細胞株をヌ-ドマウスに皮下移植し、pFN値を測定した。1)各細胞株による差はなかった。2)controlのpFN値は712μg/ml、移植後2、4、9、14週では各々652、844、902、730μg/mlであり多少の変動はみられるものの有意差はなかった。転移の有無、悪液質状態の有無によっても差はなかった。マウスの場合測定値のばらつきが大きく、その原因として、FN測定キットがロットによりFN活性に差があり、マウスでは検体量が限られ複数回の測定ができない場合があった事、血清に近い検体があった事などがあげられる。これが、臨床例との相違の一つの要因であろう。今後は測定法の改良、他のパラメ-タ-を加えての総合的な検討が必要である。3.温熱療法について。継代した膀胱癌細胞において、至適温度における生存細胞数は加温前の10^<ー1>前後で熱感受性はあると思われた。ヌ-ドマウス移植腫瘍に対するTHERMOTRON・RF・I.Vを用いたRF加温実験では、マウスの死亡等により複数回の加温が困難であり、今後の課題と思われた。