著者
杉野 宏子
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.499-512, 1989-03-20 (Released:2014-11-20)
参考文献数
35

乳房の造形手術 (乳癌根治術後の再建術・乳房縮小術・乳房増大術) では, 乳房の左右対称性を保ち, 適切な体積の乳房を得ることが重要で, 乳房体積の術前・術後の計測は不可欠である. 今回著者は, 乳房体積の新しい計測法として, 超音波断層法による計測を試み, 有用と考えられる結果を得た. すなわち, 11歳から61歳までの62名の健康な女性の124乳房に対し, 全自動水浸機械式コンパウンド走査超音波断層装置を用い, 連続超音波断層像を求め, その画像からコンピュータによる画像再構築法により, 各乳房および乳腺の体積を計測した. 乳房体積は年齢とほとんど相関なかったが, 乳腺体積および肥満度が増加するとともに増加し, 乳腺体積と最も強い相関があった. 乳腺体積は加齢とともに減少し, 肥満度が高くなるとともに増加する傾向はあったが, いずれも相関は強くなかった. 乳房中に占める乳腺体積の割合 (G/B比) は加齢とともに減少する傾向を示し, 相関は比較的強かったが, 肥満度と強い相関はなかった. したがって, 加齢とともに乳腺が萎縮し相対的に脂肪量が増加することが確認された. また, 授乳経験の有無によってG/B比に有意差はなく, 授乳経験がある乳腺は無いものに比べ萎縮しやすいとはいえなかった.さらに, 超音波断層法を用いた画像再構築法による体積計測の有用性について検討を加え, その実際的利用の可能性を示唆した.