著者
李 兮然
出版者
埼玉大学大学院人文社会科学研究科日本語専攻内 さいたま言語研究会
雑誌
さいたま言語研究 (ISSN:2432857X)
巻号頁・発行日
no.4, pp.14-25, 2020

本稿は、現代日本語書き言葉均衡コーパス(BCCWJ)に収録されている文学作品を調査資料として過去推量形である「~タロウ」と「~タダロウ」の使用実態を分析するものである。結果として、まず、前接する語の品詞に関して、動詞や補助動詞が前接する動詞型の場合、「~タダロウ」の使用が好まれるのに対し、名詞を代表とする名詞型の場合、「~ タロウ」の使用が好まれる傾向が見られた。また、過去推量形の意味的用法と、会話か地の文かとの間に相互関係があり、「推量」と「不定推量」は「地の文」に多く現れ、「確認要求」は「会話」に多く現れることが確認できた。最後に、経年変化について、1940 年代以降、「~タダロウ」の使用数が「~タロウ」を上回るものの、「~タロウ」もまだ使われ続けている等の特徴を明らかにした。