著者
李 婷
出版者
待遇コミュニケーション学会
雑誌
待遇コミュニケーション研究 (ISSN:13488481)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.85-101, 2020-02-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
14

本研究の目的は、待遇コミュニケーション論の観点から、これまでそれぞれが個別に研究されてきたメタ言語表現とコミュニケーションのメタ認知の関係を明らかにすることである。そのために、収集した自然談話資料で実際に使用されたメタ言語表現について、コミュニケーションの当事者にそれぞれフォローアップインタビューを行った。まず、1)メタ言語表現の生成過程においてどのようなメタ認知的活動が行われうるのかを示し、2)メタ言語表現の使用とコミュニケーションのメタ認知の関係について4パターンにまとめることで、分析の射程と留意点を明確にした。それから、1)と2)を踏まえた上で、「人間関係」、「場」、「意識」、「内容」、「形式」に言及するメタ言語表現(「僕も人のことを言える立場じゃないけど、」、「やっぱ、家族を持ってる方は、言うことが違うなあ!リアルだわ。」、「ちょっと食事の前であれなんだけれども、」、「別にうちの娘を自慢してもしょうがないんだけど、」、「青春時代に傷ついたことがあって、」、「簡単に言うと、」)を取り上げ、コミュニケーション主体に実施したフォローアップインタビューで得られた語りからコミュニケーションのメタ認知を探った。結果として、メタ言語表現の使用に関わるメタ認知的知識とメタ認知的活動が確認でき、「事後段階」の深い内省と本人でしか語れない示唆が得られている。部分的、断片的ではあるが、コミュニケーション主体の語りには、メタ言語表現の使用とコミュニケーションのメタ認知の結びつきが示されている。また、コミュニケーション主体として持っているメタ認知的知識に基づいた上で、コミュニケーション行為を遂行しながらメタ認知的モニタリングの下で、メタ言語表現によってコミュニケーションを調整し、メタ認知的コントロールを行うというプロセスは、コミュニケーション主体の語りによって具現化されたのではないかと思う。