著者
李 岡茂
出版者
一般社団法人 日本デザイン学会
雑誌
デザイン学研究 (ISSN:09108173)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.55-64, 2001-01-31 (Released:2017-07-21)
参考文献数
18

フラクタル幾何学の「自己相似性」の概念は、自然の形態を見る新しい視座を与えた。本論では「自己相似性」が自然物だけではなく、造形作品の分析にも活用される可能性に着目し、その事例研究として「アルヒテクトン」の構造分析を行った。分析の方法は、フラクタル・シミュレーションによって生成されたモデルと元の作品を比較することであった。その結果、垂直形アルヒテクトンは、基本的にはフラクタル的な構造を持っているが、各構成要素の比率関係や数においては自由な選択が行われたことが分かった。造形作業でフラクタル幾何学を応用する方法が試みられている今日、「自己相似的構造」と「作家の審美的判新」が調和されている垂直形のアルヒテクトンは、その先駆的な実例として再評価されるべきであると考える。