著者
李 景みん
出版者
札幌大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

本年度は主として、北朝鮮における大戦の終結について研究した。ソ連軍は一般に言われるほど、参戦当初において、破竹の勢いで北部朝鮮に進撃したのではなかった。日本軍の抵抗は根強く、日本が降伏した8月15日の時点で、ソ連軍は成鏡北道で足踏み状態であった。しかし、戦争が終結し各地において戦闘が停止すると、その先遣隊は順調に南下を始めた。そして、8月24日には平壤に進出した。8月30日までには北朝鮮のほぼ全域を制圧するに至った。ソ連軍の進駐と同時に日本軍の武装解除が行なわれ、北朝鮮の各地はソ連軍の占領状態に入った。日本の植民地行政機関はソ連軍によって接収され消滅したが、それに取って代わり、朝鮮民衆の自治機関が占領軍当局の力によって新たな権力機関として誕生した。確かに、ソ連軍は、米軍とは異なり、表面的には朝鮮民衆の自発的な行動を認め、間接的な占領統治体制を施いた。長年民族の独立を希求してきた朝鮮民衆は、こうしたソ連軍を解放軍として歓迎したのである。しかし、ソ連軍は社会主義者を中心に「人民政治委員会」を樹立し占領政策に臨んで行った。それは朝鮮民衆の反発をかうものとなった。