著者
李 暁茹 高橋 美保 呉 国宏 羅 ウチ
出版者
日本内観学会
雑誌
内観研究 (ISSN:2432499X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-76, 2020-09-01 (Released:2020-10-30)
参考文献数
47

近年、中国では内観療法の実践及び効果研究が主に精神疾患を持つ臨床群を対象とする医療領域で盛んに行われており、その有効性が確かめられている。本研究は非臨床群の中国人大学生を対象に内観をベースとした実践方法を開発・実践すると共に、その効果評価を行った。その際、抑うつなどの精神健康指標に加え、幸福感、気分などの心理指標、自尊心、対人関係などの認知指標を測定し、内観の効果とそのメカニズムを検討した。実験群には連続で14日間、1日1時間の内観を行い、インターネットで面接を行った。介入前後の変化を確認したところ、⑴幸福感総得点、感情得点は有意差が見られた、⑵対人関係総得点及び下位尺度の得点では有意差が見られなかった、⑶ポジティブ気分において有意差が見られ、ネガティブ気分に有意差はみられなかった、⑷抑うつ総得点、及び弛緩と苛立ち有意差が見られた、⑸自尊指標は有意差が見られた。 中国では研修所が普及していないために、内観は臨床群を対象とした活用が中心的であるが、今後は非臨床群を対象とした活用が期待される。本研究では、非臨床群を対象に開発したインターネットを活用した内観の実践方法はその有効性が示唆された。このような試みは内観の普及と発展や内観の国際化に貢献できると思われる。今後、地域や対象を広げることでその有効性を検証し、必要に応じて方法を精緻化する必要があるであろう。