著者
趙 朋
出版者
日本内観学会
雑誌
内観研究 (ISSN:2432499X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.43-55, 2013-09-25 (Released:2021-09-25)
参考文献数
14

目的 本稿では内観療法と日本伝統文化との関係を解明することで、中国における内観療法の展開を検討したい。方法 本研究では文化人類学的な研究方法を用いて、日本における「和」の思想の誕生及び発展を述べつつ、その思想が日本社会並びに日本人の人格に対する影響を分析し、内観療法と「和」の思想との関係を解明する。そして比較文化心理学⑶(Cross-Cultural Psychology)の手法で、中日両国間の文化の差を明らかにする。結果 内観療法はまさに日本伝統文化の一つである「和」の思想を土台に発展されたものである。そして、内観療法はその日本伝統文化の中核でもある「和」の思想の体現であり、日常生活における日本人の「和」の考え及び行動モードに対する集中・強化である。結論 内観療法は一種の生活態度であり、健康哲学であり、決して単なる心理療法ではない。内観療法は日本伝統文化に色染められた、ヒューマニスティック心理療法⑷(Humanistic Psychotherapy)の一つである。一方、中国では、個人の自己中心的な傾向が強く、抵抗も大きいため、治療も難しくなる。したがって、内観療法を中国の社会文化に合うようにアレンジすることは内観研究者としての最も重要な課題である。
著者
高橋 美保
出版者
日本内観学会
雑誌
内観研究 (ISSN:2432499X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.29-32, 2021-09-01 (Released:2021-09-25)
参考文献数
3
著者
李 暁茹 高橋 美保 呉 国宏 羅 ウチ
出版者
日本内観学会
雑誌
内観研究 (ISSN:2432499X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.61-76, 2020-09-01 (Released:2020-10-30)
参考文献数
47

近年、中国では内観療法の実践及び効果研究が主に精神疾患を持つ臨床群を対象とする医療領域で盛んに行われており、その有効性が確かめられている。本研究は非臨床群の中国人大学生を対象に内観をベースとした実践方法を開発・実践すると共に、その効果評価を行った。その際、抑うつなどの精神健康指標に加え、幸福感、気分などの心理指標、自尊心、対人関係などの認知指標を測定し、内観の効果とそのメカニズムを検討した。実験群には連続で14日間、1日1時間の内観を行い、インターネットで面接を行った。介入前後の変化を確認したところ、⑴幸福感総得点、感情得点は有意差が見られた、⑵対人関係総得点及び下位尺度の得点では有意差が見られなかった、⑶ポジティブ気分において有意差が見られ、ネガティブ気分に有意差はみられなかった、⑷抑うつ総得点、及び弛緩と苛立ち有意差が見られた、⑸自尊指標は有意差が見られた。 中国では研修所が普及していないために、内観は臨床群を対象とした活用が中心的であるが、今後は非臨床群を対象とした活用が期待される。本研究では、非臨床群を対象に開発したインターネットを活用した内観の実践方法はその有効性が示唆された。このような試みは内観の普及と発展や内観の国際化に貢献できると思われる。今後、地域や対象を広げることでその有効性を検証し、必要に応じて方法を精緻化する必要があるであろう。