著者
李 永魯
出版者
The Botanical Society of Japan
雑誌
植物学雑誌 (ISSN:0006808X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.910, pp.122-130, 1964
被引用文献数
10

本報は第1報につづくもので, 東京大学理学部の原 寛教授のもとでなされたものである. ススキ類は外形上互いに類似しているので, 分類上種々の困難がある. これをまず葉の解剖学的特徴にもとついて分類したいと考えた. アジア全体にわたって産する多くの種類をとりあつかうとともに, 足立氏および西川氏から送っていただいた交配雑種も調査し, 解剖型および雑種における遺伝因子の表現を検討した. また自然雑種とおもわれるものを解剖学の見地から発見しようとした. 葉の表皮型によって, ススキ型, ハチジョウススキ型およびトキワススキ型の3つに容易にわけられた. また葉の横断面の型によってこれを3つの型に分けた. ススキ型, ハチジョウススキ型およびカリヤス型がそれである. 2細胞性微毛では長さに相当変異があることを認めたが, 一般に, トキワススキ,オギ,ハチジョウススキでは長くススキ類では短かく, カリヤス類ではもっとも短かいことを認めた. カリヤス類の <i>M. nepalensis</i> は葉の解剖型が非常によく似ている.雑種において表皮上にパピラ (Papillae) のある形質は常に遺伝学的に優陸であり, そのない形質は劣性であるように見える. ススキとハチジョウススキとの雑種ではススキのパピラが出現し, 維管束はハチジ<br>ョウススキ型で, あたかもススキの皮をかぶったハチジョウススキのようである. 以上のような葉の解剖学的見地から, これらの雑種性をおびた変種とおもわれるものの数群を九州, 信州および台湾などで見いだすことができた. 本研究にススキの交配雑種材料をおくってくださった三重大学の足立昇造教授および岐阜大学の西川浩三博士に感謝します.