著者
李 美子
出版者
四天王寺大学
雑誌
四天王寺大学紀要 (ISSN:18833497)
巻号頁・発行日
no.69, pp.219-226, 2021-03-25

和歌山県の名物、径山寺味噌(または金山寺味噌)は今現在も日本全国各地で製造・販売されている人気の発酵食品であり、その商品名には「径山寺味噌」と「金山寺味噌」がある。それぞれ中国浙江省の杭州市にある径山寺、あるいは江蘇省鎮江市の金山寺から伝わったとされている。この伝来説にはいくつかの問題もあるが、その考証を行った先行研究はほとんど存在しない。 本研究では、まず、径山寺味噌と金山寺味噌の伝来説について整理・分析した上で、「金山寺味噌」の伝来に関する記述の問題点を指摘した。次に、『和漢三才図会』に見る「経山寺未醤」の記述と中国の『居家必用事類』に見る「金山寺豆豉」及び金山寺の僧侶によってつくられた「金山鹹豉」の記録を考察・検討し、「金山寺味噌」の伝来について詳細を明らかにした。そして「径山寺味噌」の伝来説は『和漢三才圖會』に見る「経山寺未醤」の記述と法燈国師覚心の「径山寺」での修行の歴史事実によって創作されたものであろうと推察した。