- 著者
-
李 賛榮
- 出版者
- 大阪歯科学会
- 雑誌
- 歯科医学
- 巻号頁・発行日
- vol.53, no.4, pp.g43-g44, 1990
最近のコンポジットレジン修復はエナメル質のみならず, 象牙質に対して接着性を有することが求められている. そこで私は, 新しく試作した4-META系デンチンボンディングシステムの象牙質接着性を検討するとともに, 歯髄に対する病理学的反応をニホンザルを用いて検索し, 臨床応用に際して2, 3の問題点をも指摘することができた. 実験1. 試作ボンディングシステムの象牙質接着性について 試作ボンディングシステムMETAFIL Iを用い, 被験歯は抜去後直ちに4 ℃生理食塩水中に浸漬保存し, 数か月経過のヒト大臼歯を使用した. エッチング剤は20%リン酸溶液 (20-P), 25%リン酸溶液 (25-P), 40%リン酸ゲル (40-P), 10%クエン酸と3%塩化第二鉄混合液 (10-3)と, pH7.4に調整した0.5M・EDTAの5種を用いた. エッチング後のプライマーは, GLUMA (10%Glutaraldehyde+35% Hydroxyethyl-methacrylate) を用いた. コンポジットレジンはClearfil New Bondを用いるときは化学重合型のClearfil Posteriorを, 4-META系の場合は光重合型のMETAFIL Iを用いた. 実験結果 1. 象牙質に対する接着強さは, 一般的に従来の象牙質ボンディング剤に比べて同等かまたはそれ以上の値を示した. 2. 酸処理剤としては40-P以外に10-3が適していた. 3. プライマーとしてのGLUMAとの組み合わせについては, とくに効果をみなかった. 実験2. 試作ボンディングシステムの歯髄反応 用いた修復剤は実験1に用いたものと同様である. ただし, ボンディング剤を適用する前の酸処理については, エナメル質には30-Pを, 象牙質には4.5%EDTA/Fe・Na水溶液を用いた. 実験に供した動物はニホンザル雌雄各5匹 (体重10〜15kg) で, 犬歯を除く上下顎前歯 (総計40歯, 実験歯20, 対照歯20) を使用した. 通法により頬側歯頚部に5級窩洞を形成し, ベベル形成後, 通法に従ってコンポジットレジン充填を施し, 対照歯には水酸化カルシウム製剤およびリン酸亜鉛セメントを使用した. 観察期間は充填後1週間および12週間とした. 反応の程度はADA, FDI/ISOの診断基準に従って確認した. 実験結果 1. 歯髄刺激は従来品のコンポジットレジン修復材と同程度か, それよりやや少ない程度のものであった. 2. 歯髄刺激の反応結果と考えられる修復象牙質の添加が, コントロールに比較してやや多いようであっだが, この原因が歯髄刺激の持続性にあるかどうかは不明で, 重篤な為害作用も認められず, 臨床応用には問題ないと考える.