著者
村上 圭子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.2-33, 2020 (Released:2021-04-16)

2020年5月、フジテレビ系列で放送されていたリアリティーショー『テラスハウス』に出演中の22歳の女性プロレスラーの木村花さんが亡くなった。SNS上で番組内容をきっかけとした誹謗中傷を受け、自ら命を絶ったとみられている。 そもそもリアリティーショーとは、定義もスタイルも曖昧な番組群である。おおよその共通項からまとめると、「制作者が設けた架空のシチュエーションに、一般人や無名のタレント等を出演させ、彼らの感情や行動の変化をひき起こす仕掛けを用意し、その様子を観察する番組」といった所か。欧米を中心にここ20年で増え、最近は有料動画配信サービスでも提供されている。 しかし、リアリティーショーは誕生当初から、出演者の心を"虚実皮膜"の状態に長時間置くストレス、出演者に葛藤を与えるような仕掛けをする"社会実験"的な側面、視聴者が出演者の様子を"のぞき見"する倫理的課題が指摘され、欧米では多くの出演者の自殺が報告される等社会問題となっていた。近年はSNSの普及で、出演者はより誹謗中傷を受けやすい環境に置かれ、対応の必要性が叫ばれていた。 花さんの死のような痛ましい問題が繰り返されないため、メディア研究の分野では何を考えていくべきか。本稿は1回目として、そもそもリアリティーショーとはどんな番組を指し、なぜここまで発展してきたのか、これまで指摘されてきた課題はどのようなものだったのかを考察する。
著者
村上 圭子
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.721-731, 2017-02-01 (Released:2017-02-01)
参考文献数
5

地上波放送の完全デジタル化が終了して5年を超え,テレビ,放送を取り巻く環境は様変わりした。端末のマルチデバイス化,伝送路のブロードバンド化,サービスのプラットフォーム化が進み,インターネット上には放送事業者以外による多種多様な動画配信サービスが乱立してきた。視聴者のテレビ離れの傾向はもはや若者だけのものではなくなっている。総務省では2015年11月に「放送を巡る諸課題に関する検討会」を設け,2016年9月から個々のテーマ別に議論が開始された。本稿ではまず,テレビを取り巻く昨今の変化と放送政策との関係について確認したうえで,4K・8K放送と動画配信(特に同時配信)の2点に絞って課題を論じたい。
著者
村上 圭子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.3-23, 2023-01-01 (Released:2023-02-20)

2021年11月に総務省で開始した「デジタル時代における放送政策の在り方に関する検討会」は、分科会やワーキンググループが設けられ、多様な論点で議論が続けられている。2022年8月には取りまとめが公表され、放送の将来に向けた政策として、守りの戦略と攻めの戦略が示された。守りの戦略とは、放送ネットワークインフラの将来像についての検討である。具体的には、1)クラウドマスターの導入等も含めたマスター設備の将来像、2)複数の局による共同利用型の模索を始めとした、中継局の保守・運用・維持管理のあり方、3)維持・更新費用が割高な小規模中継局等のエリアについて、放送波やケーブルテレビの再放送に加えて、ブロードバンドによる代替の検討という3点である。攻めの戦略とは、放送局のネット配信のあり方についての検討である。具体的には、1)「誰もが安心して視聴できるという信頼を寄せることができる配信サービス」に、人々がアクセスしやすくするための方策、2)ネット時代における公共放送の役割や、現在は放送の補完業務であるNHKのネット活用業務の位置付け等の2点である。提示された1つ1つの論点は重く、それらは複雑に絡み合っているため、論点を俯瞰して論じていかない限り、放送の将来像は見えてこないというのが筆者の基本認識である。加えて、議論のプロセスに並走しながら、重要な論点が避けられてはいないか、先送りされてはいないかを適切なタイミングに問題提起していくことも、どういう結論に至ったのかを検証する以上に重要ではないかと考えている。本稿では、8月に公表された取りまとめを受けて速報的に放送文化研究所のサイトで問題提起した、3回分の「文研ブログ」を再掲する。なお、ブログで扱った論点については、その後の議論の進捗に応じて内容が変化しているものもあるが、議論のプロセスの記録と理解いただきたい。
著者
村上 圭子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.2-33, 2020

2020年5月、フジテレビ系列で放送されていたリアリティーショー『テラスハウス』に出演中の22歳の女性プロレスラーの木村花さんが亡くなった。SNS上で番組内容をきっかけとした誹謗中傷を受け、自ら命を絶ったとみられている。そもそもリアリティーショーとは、定義もスタイルも曖昧な番組群である。おおよその共通項からまとめると、「制作者が設けた架空のシチュエーションに、一般人や無名のタレント等を出演させ、彼らの感情や行動の変化をひき起こす仕掛けを用意し、その様子を観察する番組」といった所か。欧米を中心にここ20年で増え、最近は有料動画配信サービスでも提供されている。しかし、リアリティーショーは誕生当初から、出演者の心を"虚実皮膜"の状態に長時間置くストレス、出演者に葛藤を与えるような仕掛けをする"社会実験"的な側面、視聴者が出演者の様子を"のぞき見"する倫理的課題が指摘され、欧米では多くの出演者の自殺が報告される等社会問題となっていた。近年はSNSの普及で、出演者はより誹謗中傷を受けやすい環境に置かれ、対応の必要性が叫ばれていた。花さんの死のような痛ましい問題が繰り返されないため、メディア研究の分野では何を考えていくべきか。本稿は1回目として、そもそもリアリティーショーとはどんな番組を指し、なぜここまで発展してきたのか、これまで指摘されてきた課題はどのようなものだったのかを考察する。
著者
村上 圭子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.6, pp.2-28, 2020

本稿は、通信・放送融合時代の放送業界と放送政策の動向を中心に、メディア環境の変化を俯瞰して今後の論点を提示するシリーズの第5回である。本稿は2019年8月から2020年4月までを対象とする。本稿ではまず、新型コロナウイルスに関する放送事業者の取り組みや課題に触れたい。日々刻々と変化する状況を冷静かつ客観的にどう伝えていくか。一斉休校によって教育を受ける機会が奪われている小中学校の生徒たち向けにどのような役割が担えるか。置かれた状況が大きく異なる人々に対して、どのようなメッセージを発信していけるか。現在も状況が変化し続けているため、分析や認識は不十分であるが、状況が深刻化した4月に入ってからの動向を記録しておきたい。本稿のメインはNHKを巡る動向である。4月17日、「放送を巡る諸課題に関する検討会」の下に「公共放送の在り方に関する検討分科会」が立ち上がった。今後は、「業務」「受信料」「ガバナンス」の「三位一体改革」と共に、受信料制度の議論が本格的に行われることになるという。本稿では、4月1日にNHKの放送同時配信及び見逃し配信サービス「NHKプラス」が本格開始したのを機に、常時同時同時配信を巡る議論を、議論が開始された2015年にさかのぼって検証した。またこの半年のNHKを巡る動向を、"三位"の3点に分けて振り返った。以上の作業を通じて、今後NHKに関して重要だと思われる論点を筆者なりに提示した。
著者
村上 圭子
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.2-25, 2018

2018年1月から、総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会」では新たな分科会が立ちあがった。これは、2017年11月末に提出された「規制改革推進に関する第2次答申」に示された電波制度改革を受けたもので、テーマは「放送サービスの未来像を見据えた周波数有効活用に関する検討」である。第2次答申をまとめた内閣府の規制改革推進会議の問題意識は、IoT活用や5Gの整備等によって、超高齢化、過疎化する日本の課題解決を図っていくために、通信サービスにも使い勝手の良い放送用帯域を別な用途でより有効活用できないか、というものである。議論の中では、放送事業者から周波数を開放したい推進会議の委員や有識者と、引き続き周波数を確保し放送サービスを維持発展させていきたい放送事業者と総務省の間で対立する場面もみられた。本稿ではまず、規制改革推進会議で"放送"がどのように扱われてきたのかを議事録を手がかりにつぶさに見ていく。その上で、放送サービスの未来像について、地上4K・8K、同時配信と共通プラットフォームという観点から考えていく。最後に、現在総務省が未来のビジョンを考える上で想定する2040年にも視野を広げて放送のあり方を考えていく。なお本稿は、2013年からシリーズ連載してきた「「これからのテレビ」を巡る動向を整理する」をリニューアルした新たなシリーズである。
著者
村上 圭子 黛 岳郎 平田 明裕 星 暁子 有江 幸司
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.68, no.7, pp.2-27, 2018

NHK放送文化研究所では2016年に引き続き,2017年11月から12月にかけて「メディア利用動向調査」を配付回収法で実施し,2,340人から有効回答を得た。今回は主に次の4つのテーマで結果をまとめた。①4K・8K・・・4Kの認知率は全体で前年から増加(72%→76%)し,8Kの認知率も全体で前年から増加(47%→55%)した。4Kへの興味は「とても興味がある」が前年から増加(4%→5%)し、「まあ興味がある」も前年から増加(24%→31%)した。②放送のインターネット同時配信・・・認知率は35%にとどまるものの,利用意向は41%だった。利用意向を男女年層別にみると,男16~29歳・女30代では5割を超えるなど,若・中年層で一定の需要がある。③有料動画配信サービス・・・加入者は全体で前年から増加(4%→7%)した一方で,加入意向がある人は前年から減少(20%→13%)し,今後,新たな関心層をどうやって増やしていくかという課題が浮き彫りになった。④ニュースのサイトやアプリ・・・全体でもっとも利用されているのは「Yahoo!ニュース」(44%)だった。次いで多いのが「LINE NEWS」(22%)で,男女年層別にみると,女16~29歳では「LINE NEWS」(60%)が「Yahoo!ニュース」(50%)を上回った。使う理由としては「使いやすいから」が多く挙げられた。