著者
藤井 敏弘 村井 慎哉
出版者
公益社団法人 高分子学会
雑誌
高分子論文集 (ISSN:03862186)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.201-207, 2005-05-25 (Released:2010-03-15)
参考文献数
20
被引用文献数
1 3

毛髪および羊毛からのタンパク質抽出に有効な信大法をヒト爪に適用した. この結果, 従来法と比べ, 信大法を用いた場合の抽出タンパク質量は約2.5倍多かった. また, 毛髪, 羊毛と比べ, 抽出標品は, ハードケラチンやマトリヅクスタンパク質に加え, 爪の特性であるソフトケラチンを含んでいた. 爪ケラチンおよびマトリックスタンパク質にリン酸化分子種が含まれていることから, 翻訳後の修飾が強く示唆された. 毛髪タンパク質溶液からフィルムヘ簡便に変換するブレキャスト法, ポストキャスト法, ソフトポストキャスト法を爪タンパク質に適用したところ, すべての方法でフィルム形成が見られ, 70~90%の高い割合で回収された. フィルムはハードケラチンを主成分とし, ソフトケラチン, マトリックスタンパク質を含んでいた. タンパク質溶液からフィルムヘ1分以内の短時間で形成されるプレキャスト法およびポストキャスト法で得られたフィルムは白色で不透明性であったが, 一方, 形成に5~40分ぐらい必要なポストキャスト法 (pH5) とソフトーポストキャスト法で得られたフィルムは半透明性を示した. SEM観察から, 半透明性のフィルムは不透明のフィルムよりもその表面が滑らかであった. これら半透明性のフィルムは, 270~295nmに吸収をもつことから, 新規のUVケア機能をもつ製品へ期待される.