著者
大庭 喜八郎 村井 正文
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.177-180, 1971-06-25
被引用文献数
2

1962年に放射線育種場のガンマー線照射ほ場に定植された市販のスギ苗の中から劣性の白子遺伝子についてヘテロ接合型, 4個体, 淡緑色または黄緑色苗を生ずる劣性遺伝子についてヘテロ接合型, 2個体および両遺伝子について二重へテロ接合型, 1個体を発見した。この劣性遺伝子のホモ接合体は, 自然条件のもとでは発芽後間もなく枯死する。これらの劣性遺伝子はガンマー線照射によって生じたものとは考えられず, ヘテロ接合型の母樹から採種されたために, 劣性遺伝子が後代に伝達されたのであろう。ジベレリン処理により誘起した花を用い, 自殖を含む2カ年の交配試験により, 単一ヘテロ接合型苗は, 正常苗 : 白子苗または淡緑色苗を3 : 1の割合で分離した。一方, 白子は淡緑色に対し上位性があるため, 二重ヘテロ接合型苗は, 正常苗 : 白子苗 : 淡緑色苗が9 : 4 : 3の分離比をしめした。この劣性遺伝子とスギの1個体および2品種, すなわち, G-5,クモトオシならびにクマスギにおいて淡緑色苗を生ずる劣性遺伝子とは, いずれも相同ではなかった。