著者
新 隆志 村尾 澤夫
出版者
熊本工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

診断用酵素として現在実用化されているアスコルビン酸オキシダーゼはキュウリ等の高等植物由来のものであるが.これら酵素は保存安定性が極めて悪いという分析酵素として致命的な欠点がある。そこで.研究代表者らは.より安定な酵素を微生物に求めてスクリーニングし.カビH1-25株の分離に成功した。本研究課題では.微生物で始めて得られた新規なアスコルビン酸オキシダーゼを研究材料にして.酵素の諸性質の解明.分析酵素としての実用性の検討などを目的にした。酵素生産菌株の分類学上の位置について調べた結果.Acremonium Sp.と同定した。本菌の培養上漬から酵素の分取を行い.各種クロマト操査によって.本酵素を電気泳動的.HPLC的に均一なものとして得た(収率8.8%.比活性上昇850倍)。この精製標品を用いて諸性質を調べた。本酵素の至適pHは4.至適温度は45℃.安定pH6〜10.熱安定性60℃であり.植物由来のものに比べて.極めて安定な酵素であることを明らかにした。また分子量8.0万(SDS-PAGE).7.6万(ゲルロ過).等電点4.0.銅約4グラム原子/モルを含み.糖を14.1%含むことなどの性質を明らかにした。L-アスコルビン酸に対するKmは0.19mM.分子状酸素を電子受容体として反応産物デヒドロアスコルビン酸を生成することからEC1.10.3.3に分類できる酵素であることを明らかにした。次いで応用面について検討を進め.アスコルビン酸の酸化に伴う溶存酸素消費速度を測定することによってアスコルビン酸の定量ができることを明確にした。臨床分析酵素としての実用性について検討し、コレステロール測定糸などで、本酵素の実用性が高い事を明確にした。