著者
村山 慶隆
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P3172-E3P3172, 2009

【はじめに】パーキンソン病では、自宅でのトイレ動作が日中は自立しているが、夜間は時間を要する、また、介助になるケースも少なくない.そこで今回、夜間のポーダブルトイレ(以下、Pトイレ)動作が困難な利用者に対して、その手順や動線のプロセスで必要な環境調整を行ったので報告する.<BR><BR>【症例と評価】52歳・男性.疾患はパーキンソン病・腸閉塞.ADL・基本動作は、夜間はトイレ要介助、屋外歩行軽介助以外は自立.Yahr2であり、歩行時に小刻み・突進現象がある.自宅での生活状況は、冬場は夜間のトイレ回数増加、同居の母親は高齢認知症のため、介護力は不十分である.居室は段差などのバリアはなく、電動ベッド上にリモコン・ブザー・枕・電気毛布などがあるため、ベッド機能が発揮しづらい状況にある.Pトイレはベッドの近くにあり、移乗用のベストポジションバーを設置している.これら本人と環境の双方を評価した結果、内服薬の効果が少ない夜間、プロセスの開始であるベッドからの起き上がり動作が困難であることが判明した.時間帯・家族・トイレのタイミングなどから、人による介助は困難であり、起き上がりも含めた一連の動作自立を目標とした.<BR><BR>【方法と結果】無駄な手順の回避や安全を考慮し、電動ベッドの機能を利用した起き上がりが自立できるような環境調整を行った.1.リモコンの位置設定、2.ベッドアップ角度設定、3.ベッドアップ時にブザーが落ちないように固定、4.3同様に枕の固定、5.端座位時に電気毛布のコードが足に引っ掛からないように固定、6.端座位時に両足が下ろしやすく、掛布団が落ちないように柵の選定を行い、動作練習の結果、一連の動作が自立した.<BR><BR>【考察】生活習慣や家族・住宅・季節・時間など、環境の影響を受けやすい個別の生活動作は、心身機能だけでなく、本人に関連する生活・介護状況も十分に評価すべきである.また、生活動作は1つの動作を切り取らず、リモコンを探してから布団を掛けて寝るまでなど、動作手順と動線の2つの流れ評価が必要である.さらに、身体機能の低下を身体機能そのものの向上で補うこともできるが、環境の機能も利用することで、より実用的な自立が実現できる.生活動作の一連の流れは、理学療法士(以下、PT)の専門性である起居・移乗・移動によって1つ1つの動作がつなげられていることが多い.PTが生活動作の自立への手段として、環境の機能を活かす利点は、1.身体機能を熟知している、2.残存機能を効果的に発揮できる、3.生活動作の基礎となる具体的アプローチができる、4.相乗効果での自立度向上・介護量軽減、などが挙げられる.本人と本人を取り巻く環境を含めた生活機能全般を見渡すこと、そして、その中にある課題と課題をつなげ、環境の機能を利用することで、これまでよりPTの専門性に深みが増すと思わ