著者
村松 紀久夫 粟村 光男
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.571-578, 1986-12-05

茶樹の立枯性症状発生園の特性を明らかにするため,静岡県西部において,3つの症状園を選び,対照園を対比させて,症状園の養分吸収特性および土壌水分特性を調べた。また症状園の施肥改善試験を行った。1)症状園茶樹の養分吸収において,2つの症状園で葉部の塩基組成のアンバランスおよびマンガンの過剰吸収,根部のアルミニウム不足などの吸収特性が認められた。またこの特性が認められない症状園では,とくに過湿になりやすい条件下にあり,物理性の不良が認められた。2)施肥改善による細根の断面分布は,有機肥料系処理区>無機肥料系処理区>対照区の関係がみられた。立枯性症状の多発した処理区は,根の生育が劣り,土壌水分量が高かった。断面分布の細根数と発生率の間にr=-0.812と比較的高い負の相関が認められた。3)以上の結果から,茶樹の立枯性症状とは,養分吸収のアンバランスや土壌水分に関連する物理性の不良などによって,茶樹は,とくに根部の生長が抑制され,樹勢も著しく弱まる。それにせん枝や過湿などが加わると,さらに根の活性が衰える結果発生する症状と考えられた。