著者
小島 康裕 村松 雅人
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.241-245, 2023 (Released:2023-11-24)
参考文献数
8

【緒言】肝転移・傍大動脈リンパ節転移を伴った食道がんによる腰背部痛の鑑別に,硬膜外ブロックが痛みの原因推定に有用であった症例を経験した.【症例】69歳男性,既往歴:腰椎椎間板ヘルニアの手術歴(20歳時).食道がんの診断で経過観察中に腰背部痛を自覚,その後心窩部痛を併発した.MRIでL1/2, L2/3椎間板ヘルニアの所見を認めた.症状緩和および腰背部痛の原因を鑑別するためX線透視下にTh8/9より胸部硬膜外ブロックを施行した.鎮痛効果を確認後,神経破壊薬(無水エタノール)を用いた内臓神経ブロックを施行したところ,心窩部痛・腰背部痛は消失した.その後,4カ月間在宅療養を継続し,鎮痛剤を増量することなく,疼痛コントロール良好な状態で永眠された.【結論】胸椎レベルでの硬膜外ブロックを事前に施行し,除痛が得られたことから内臓神経由来の痛みであることが推察できた.同手技はその後の痛みの治療選択に有用であった.