著者
村橋 麻由美
出版者
日本重症心身障害学会
雑誌
日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.283, 2015 (Released:2021-03-10)

はじめに 重症心身障がい児(者)では不随意運動、静止維持困難、覚醒時の常時体動、刺激で暴れる等、腋窩体温計で測定に困難な事例がみられる。当院では感染予防を目的に非接触体温計を導入したが、使用後、腋窩体温計に比して低い値が出るという声があがった。非接触体温計は赤外線で皮膚温を測定する器具であるが額ではなく首で測った方が高い値、より腋窩体温に近い値が出るという声もあった。非接触体温計は簡便、短時間の測定が設計思想に含まれており常時衣服などで覆われていない額での測定方法が推奨されている。腋窩検温が困難な重症心身障がい児(者)や感染症の患者には非常に便利なツールでもあることから、衣服を脱ぐなどの刺激行為がない状態で測定できる部位として頸部(頸動脈付近)を比較部位として選択し腋窩体温計と非接触体温計の値を比較したところ、測定値誤差についていくつかのパターンが見られたので報告する。 研究方法 調査期間:30日比較機器・非接触体温計 Tecnimed Srl サーモフォーカスプロ® 測定時間数秒・腋窩電子体温計 テルモC205® 測定時間15秒 調査対象:入院患者(重症心身障害、ダウン症候群 他 病名不明含む)40名 調査方法:室温、湿度を考慮し同時間帯に腋窩体温計と非接触体温計で体温測定。非接触体温計は額と頸部の二カ所で最高温度を測定して比較。 結果 非接触体温計と腋窩体温計の測定値には0.0〜2.5℃の差があった。非接触体温計の測定値で腋窩測定値と差が少なかったのは頸部であった。肥満で頸部に脂肪が多くついている患者では非接触体温計で額より頸部が低く測定された。筋緊張を伴う患者は腋窩体温計の測定値との差が小さい傾向が見られた。年齢、性別にかかわらず筋組織が減少している患者は非接触体温計で頸部と額と測定値の差が小さかった。