著者
村瀬 雅敏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.5-13, 2005 (Released:2005-04-27)
参考文献数
8

宮城県で行われた第39回日本理学療法学術大会では演題総数が1,000題を超えてきたが県内士会員の発表は他の学会への発表も含めて低迷しているように思われた。そのため,学会発表を再考するために,まず過去10年の県士会員の学会発表動向を述べると共に,他県の状況も合わせて比較検討した。宮城県は会員数のわりに発表演題数が少ない傾向にあり,近年さらに減少の傾向にあることも明らかになった。そこで,改めて研究とは何かという観点,何故研究を行うのかという観点からの私見を述べた。研究方法の中で症例報告は研究デザインタイプの中で妥当性の低い階層に位置しているが,その利点として,研究をするうえで便宜的な手法であることは無論であるが,費用も最小で済み,より詳細な研究のための仮説を導くことが出来る研究デザインであることなどから,もう一度見直されるべきなのではないだろうかと考えている。また,理学療法士の大多数が臨床業務に従事している現状から症例報告は,評価-治療-事後評価といった一連の日常臨床業務の過程が,症例報告(研究)の記述過程と重なる部分が非常に多いことから,症例報告を書くことは臨床行為の確実さにつながることが考えられ,新人理学療法士には大変お勧めの研究手法である。