著者
中村 雅俊
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-15, 2022 (Released:2022-04-06)
参考文献数
26

「じゃあ今からストレッチしますね」と理学療法士の先生なら一日一回,もしくは複数回,口に出している言葉だと考えられる。このストレッチングに関する知識についてアップデートをするということを目的に第 24 回宮城県理学療法学術大会で講演を行った。今回は,その内容をまとめ,更にその情報よりも新しく情報をアップデートしたものとなっている。しかしながら,医学というものは日進月歩で進んでおり,本稿の内容が最新のものではないと確信しており,今後も新しく情報が追加・更新される。そのため,本稿で期待すべきこととしては,現在のストレッチングに対する知見について現在の情報をアップデートすることだけではなく,新しいエビデンスを確立するための情報を築くための研究や発表を行うため基礎情報となることを楽しみにしております。

44 0 0 0 OA 浮腫の基礎

著者
小野部 純
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.32-40, 2010 (Released:2010-02-23)
参考文献数
23

浮腫とは,組織間隙(Interstitial space)に生理的な代償能力を越えて過剰な水分の貯留した状態を指し,臨床でもよくみうけられる症状である。しかし,発症の機序をよく理解しないまま慣習的に行われている理学療法に終始し,十分な治療効果を挙げられないことが少なくない。その対策には,なぜ浮腫がおこるのか,どうすれば改善できるのかを解剖・生理学的知見を踏まえ,理学療法における介入方法を構築し直すことが重要であると考える。
著者
藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.11-16, 2011 (Released:2011-02-17)
参考文献数
16

理学療法における機能的制限へのアプローチの手法には,因果論を用いたものと運動学習論を用いた方法に大別できる。その際,理論の骨幹となるのは障害モデルであり,本邦の理学療法においては国際障害分類(ICIDH)が広く普及してきた。しかしながら,ICIDHの改訂版として作成された生活機能分類(ICF)の登場により,生物学的モデルから社会モデルを内包したモデルへの変換が図られている。理学療法における治療・介入プログラムの決定に際してモデルを活用する際には,各モデルにおける思想や作成された時代背景を理解することが必要となる。本論ではこれまで提示されてきた障害モデルを整理するとともに,障害構造分析の手法と,それらを包括する理学療法モデルについて議論する。
著者
長澤 卓真 高橋 純平 今野 龍之介 高玉 茜 畑中 咲希 濱口 唯 三船 昂平
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.42-45, 2018 (Released:2018-04-06)
参考文献数
13

【目的】本研究の目的は,静的伸張に筋圧迫を併用したストレッチングの伸張効果を検証するとともに,筋圧迫強度の違いが即時効果に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】被験者は健常若年者59名とし,スタティックストレッチング(以下;静的伸張)のみを行った群と,5 kg,10 kgと強度の異なる圧迫を併用したストレッチングを行った2群の,計3群の右肩関節水平外転関節可動域角度を比較した。【結果】ストレッチング介入前後による主効果が認められ,各群ともに可動域の改善がみられた。群間比較では,肩関節他動的関節可動域角度(Range of Motion;以下ROM)は静的伸張群と5kg圧迫群間で有意差が認められた。【考察】関節可動域の即時伸張効果は,静的伸張のみよりも適度の強度で圧迫を行ったストレッチングの方がより大きいことが示唆された。しかし,圧迫部位など他要因による影響も考慮する必要がある。
著者
藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.24-31, 2019 (Released:2019-05-17)
参考文献数
26

動作分析は理学療法において最も基本となる評価法の一つであることは論を俟たない。我々は動作分析の体系化を進めており、動作分析を日常動作分析と特定課題分析に大別している。日常動作分析は、起居動作および歩行を分析対象とし、対象者がその状態で普通に行う動作を分析するものである。この場合、正常範囲の運動パターンとの比較により、異常性を判断する。もう一方の特定課題分析は、ある運動機能が重要となる課題を与えて、その運動機能の優劣を判断するものである。臨床においては日常動作分析と特定課題分析を組み合わせながら、日常動作を効率よく行えない原因、すなわち機能低下を分析してゆく。本稿では、我々が体系化を進めている「データに基づいた臨床動作分析」の概要を説明したのち、運動機能低下を絞り込むために重要な特定課題分析について、身体運動学的観点から根拠を示したい。先にも述べたように、特定課題はある運動機能に焦点をあてており、治療へも応用可能という点で重要である。特定課題分析の意義を理解することで、的確な仮説のもとに治療が可能になるということを共有したい。
著者
村木 孝行
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.3-10, 2014 (Released:2014-04-29)
参考文献数
15

肩関節障害は運動器の障害であるが幅広い領域で対応が求められる。どの領域にも通じて必要になることは肩関節自体の病態やその機序を把握することである。特にバイオメカニクスは病態の機序を理解するのに不可欠であり,肩関節障害の理学療法における一つの基盤である。評価においては疼痛,可動域,筋力に関するものが主体となる。疼痛の原因の一つには物理的刺激があり,その種類として1)肩峰下インピンジメント,2)関節内インピンジメント,3)伸張の3つが挙げられる。疼痛の評価ではこれらの物理的刺激がどのようにして生じているのかを知ることが重要である。関節可動域や筋力の評価においては肩関節に関連する関節や筋の構造について熟知しておく必要があり,それによってなぜ制限や低下が起きているのかが明確になる。治療においては構造異常による不利益と治療効果の限界を踏まえながら,残存機能を最大限に発揮できるようにアプローチしていくことが要点となる。
著者
佐藤 洋一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.17-25, 2011 (Released:2011-02-17)
参考文献数
23
被引用文献数
2

「運動連鎖」と訳される2つの言葉,“kinetic chain”と“kinematic chain”のそれぞれを取り上げて,その概観を眺めた。“kinetic chain”に関しては,Open Kinetic Chain(OKC)とClosed Kinetic Chain(CKC)の2つのタイプに関する定義の歴史的流れを追いつつ,CKCの有利性についての文献的なレビューをした。“kinematic chain”に関しては,経験的に使われていたこの意味での「運動連鎖」に関する数本の論文を紹介しつつ,一概には経験と実験結果では一致していないことを説明した。
著者
地主 あい 日塔 啓太 大瀧 夏海 富塚 万璃 相馬 正之
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.30-35, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
17

本研究では,効果的な足趾把持力トレーニングを検証するために,静的ストレッチの介入が足趾把持力に及ぼす影響について検討した。対象は若年健常者40名とし,1週間に4回の頻度で3週間,静的ストレッチを実施するストレッチ群,筋力増強運動を実施するトレーニング群,双方を実施するストレッチ・トレーニング群,特別な介入をしないコントロール群に分類した。測定項目は,足趾把持力,足部柔軟性,足部アーチ高率とし,介入前後に2回計測した。分析の結果,足趾把持力はストレッチ群,トレーニング群,ストレッチ・トレーニング群において有意に向上した。これらのことから,静的ストレッチのみの介入によって足趾把持力は,増強できることが示された。これらの知見から足趾把持力への静的ストレッチの介入は,足趾把持力トレーニングとして有効であることが示唆された。
著者
高橋 哲也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.3-9, 2021 (Released:2021-04-13)
参考文献数
10

第23回宮城県理学療法学術大会での特別講演「運動療法時のリスク管理の要点~適切な運動療法によりアクシデントを防ぐ~」の内容をまとめた。まずは,理学療法のリスク管理と予防理学療法について,「脳卒中・循環器病対策基本法」の成立までの道のりや,「循環器病対策推進計画」の重要性について解説した。特に日本での予防理学療法の発展に期待を寄せた。続いて,運動療法時のリスク管理の要点について,血圧や脈拍数の管理,用量-反応関係(Dose–Response Relationships)の重要性,運動強度の設定の必要性,バイタルサインズの理解について解説した。そして最後に,理学療法士は,再発予防,再入院予防,重症化予防により力を入れて社会のニーズに対応すべきであると提言した。
著者
阿部 浩明 辻本 直秀 大鹿 糠徹 関 崇志 駒木 絢可 大橋 信義 神 将文 高島 悠次 門脇 敬 大崎 恵美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.11-20, 2017 (Released:2017-04-11)
参考文献数
16
被引用文献数
9

これまでの脳卒中例に対する理学療法技術は十分な科学的効果検証を行われずに継承されてきたものが少なくなかったかもしれない。脳卒中例に対する理学療法は主観的な評価が中心であったり,経験のみに基づいて構築されたりしていくべきものではなく,有効と思われる治療は検証を経た上でその有効性を示していくべきであろう。 前号に引き続き,我々がこれまで取り組んできた急性期の脳卒中重度片麻痺例に対する歩行トレーニングの実際と装具に関わる臨床および学術活動について紹介する。
著者
阿部 浩明 大鹿 糠徹 辻本 直秀 関 崇志 駒木 絢可 大橋 信義 神 将文 高島 悠次 門脇 敬 大崎 恵美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.17-27, 2016 (Released:2016-04-21)
参考文献数
42
被引用文献数
11

これまでの脳卒中者に対する理学療法技術は十分な科学的効果検証を行われずに継承されてきたものが少なくなかったかもしれない。脳卒中者に対する理学療法の治療指針を示す脳卒中理学療法診療ガイドラインにはエビデンスに基づき推奨される治療が記載されている。しかし、実際の理学療法の臨床では多様な意見があり、必ずしもガイドラインが有効に用いられてはいない感がある。脳卒中の理学療法は主観的な評価が中心であったり、経験のみに基づいて構築されたりしていくべきものではなく、有効と思われる治療は検証を経た上でその有効性を示していくべきであろう。 ここでは我々がこれまで取り組んできた急性期の脳卒中重度片麻痺例に対する歩行トレーニングの実際について概説し、装具に関わる臨床および学術活動について次号に渡って紹介したい。
著者
小林 武
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.25-36, 2005 (Released:2005-04-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

統計解析は,研究や調査等の成果を読み手(あるいは聞き手)に納得してもらうために必要な科学的証拠を提示するための一手法であり,科学的根拠に基づく介入(Evidence-based Practice)を目指す理学療法にとって欠くことのできないものである。パーソナルコンピュータとソフトウエアの高性能化によって,誰でも比較的容易に統計計算が可能になったが,最も確かな証拠を手に入れるためには,データの種類や分布等の特性を把握して,それらに適した正しい統計手法を選択・適用しなくてはならない。この総説は,理学療法で扱う変数の具体例を挙げながら,統計手法の適切な選択について概説した。
著者
諸橋 勇
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.3-10, 2020 (Released:2020-05-02)
参考文献数
20

理学療法診療ガイドライン第1版が出版され,理学療法士の間で利用する人が増えてきている一方で,エビデンスに基づいたEBPTはなかなか地に足がついて進んできていない。その原因を,理学療法士の資質や制度を概観して検討すると,その原因の代表的なものの一つに療法士と患者間のコミュニケーションの在り方があると認識できる。患者への説明や患者の診療の選択の意思決定ツールとしてガイドラインの利用が望まれる。また,理学療法の思考過程の中で経験則や思い込みなどだけではなく,理学療法の臨床判断の特殊性も加味しながら,テクニカルスタンダード,ガイドライン,エビデンス,個別性を考えEBPTの5つのステップに沿って思考過程を展開し,検証することが重要であることを強調したい。最後にEBPTを知識として持っているのではなく,まずは患者さんとしっかりコミュニケーションをとり,さらにEBPTを実施することがガイドライン活用の第一歩と考える。
著者
大橋 信義 阿部 浩明 関 崇志 大鹿糠 徹 辻本 直秀 神 将文
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.27-34, 2018 (Released:2018-04-06)
参考文献数
16

本研究の目的は,脳卒中片麻痺者の麻痺側肩関節の亜脱臼を防止する上肢懸垂用肩関節装具の装着が,脳卒中片麻痺者の麻痺側遊脚期の歩容にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることである。対象は,上肢のBrunnstrom Recovery StageがⅢ以下の脳卒中片麻痺者で遠位見守りにて歩行可能な7例を対象とした。方法は,快適歩行速度にて約9 mの直線歩行路を,上肢懸垂用肩関節装具非装着,装着時の順にそれぞれ4回歩行した。両側の肩峰,上前腸骨棘より3横指内側部,外果に付着させた反射マーカーの位置変化を三次元動作解析装置にて記録し,比較した。結果,上肢懸垂用肩関節装具装着時は,非装着時と比較して麻痺側下肢遊脚期中の麻痺側上前腸骨棘高の最大値が増大した。上肢懸垂用肩関節装具の装着は,重度片麻痺者の肩関節の二次的損傷の予防のみならず,麻痺側遊脚期に麻痺側骨盤を挙上させる効果が期待できる。
著者
太田 厚美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.14-23, 2006 (Released:2006-05-30)
参考文献数
13
被引用文献数
1

超音波療法に関わる基本的事項の概説とその応用に関する最新情報の紹介を行った。欧米では物理刺激の中で超音波が非常に使用されているが,それに対して国内ではその使用頻度は低い。その原因としては,国内では超音波の原理及びその臨床的使用の際の重要項目が十分に理解されていないことが考えられる。超音波の発生の原理,それによる生体反応,温熱刺激,非温熱刺激としての超音波,適応症と禁忌症,周波数による生体作用の差異,導子の移動による深部加温の差異,他の温熱刺激との熱発生メカニズム及び深部加温の差など,超音波療法の基礎的事項に関して簡単に概説した。また超音波治療器の選択の目安となるBNR,ERAなどの超音波の品質に関わる係数についても簡単に述べた。最後に医科では一般に知られている超音波による骨再生作用が近年歯科に応用され特に歯科インプラントへの臨床応用が始まりつつあることを紹介した。
著者
村瀬 雅敏
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.5-13, 2005 (Released:2005-04-27)
参考文献数
8

宮城県で行われた第39回日本理学療法学術大会では演題総数が1,000題を超えてきたが県内士会員の発表は他の学会への発表も含めて低迷しているように思われた。そのため,学会発表を再考するために,まず過去10年の県士会員の学会発表動向を述べると共に,他県の状況も合わせて比較検討した。宮城県は会員数のわりに発表演題数が少ない傾向にあり,近年さらに減少の傾向にあることも明らかになった。そこで,改めて研究とは何かという観点,何故研究を行うのかという観点からの私見を述べた。研究方法の中で症例報告は研究デザインタイプの中で妥当性の低い階層に位置しているが,その利点として,研究をするうえで便宜的な手法であることは無論であるが,費用も最小で済み,より詳細な研究のための仮説を導くことが出来る研究デザインであることなどから,もう一度見直されるべきなのではないだろうかと考えている。また,理学療法士の大多数が臨床業務に従事している現状から症例報告は,評価-治療-事後評価といった一連の日常臨床業務の過程が,症例報告(研究)の記述過程と重なる部分が非常に多いことから,症例報告を書くことは臨床行為の確実さにつながることが考えられ,新人理学療法士には大変お勧めの研究手法である。
著者
藤澤 宏幸
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.14-22, 2010 (Released:2010-02-23)
参考文献数
31

肩関節の形態と機能は,進化の歴史を紐解くことにより,繊細な機構であることが明らかとなる。本論文では四足歩行から二足歩行へ移行し上肢が自由となったこと,そのことが重力との闘いを招来することになり,最後には大きな可動域をもつ自由な腕を得たことを概観したい。そのうえで,ヒトの肩関節の身体運動学的特徴,肩関節疾患と機能障害,機能障害に対する理学療法について最近の知見をまじえ解説する。
著者
松田 千明 吉原 真紀 茶谷 麻衣子 滝谷 知之 千葉 奈津記
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.16-20, 2009 (Released:2009-02-17)
参考文献数
8

パーキンソニズムの歩行障害は,内的リズム形成障害による影響が大きいと考えられており,それに対して外的刺激が有効なことは知られている。今回は重度のパーキンソニズム進行例に対して,音楽CDによる音リズム刺激を運動療法に導入することで動作性改善を期待した。結果,精神活動面での変化がみられ,覚醒時間拡大,発語量増加等がみられた。動作面においては起立・立位,歩行動作能力の向上がみられ,本症例自身も身体の動きやすさを自覚された。これらの変化の要因として,音楽による精神面への作用が,活動意欲を引き出すことに結びついたと考えられる。また音リズム刺激により十分な内的リズム形成の機会を得られたことが,運動開始やその遂行のためのリズム獲得につながり,動作性向上もみられたと予測される。
著者
今野 香奈子 佐藤 かよ 門馬 一悦 遠藤 伸也
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.11-15, 2009 (Released:2009-02-17)
参考文献数
8

当施設において,車椅子の座奥行きが利用者にどれだけ適合しているのか調査した。そして,不適合者に対して座奥行きをウレタンマットで狭小化させるシーティングを行った。方法は当施設を利用している19名の女性を対象とし,シーティング前後の骨盤前傾角度と,対象者の座り心地をVAS(Visual Analogue Scale)を用いて点数化し比較した。その結果,骨盤前傾角度,VAS共にシーティング前後で有意に差があり,座位姿勢と座り心地が改善することが分かった。
著者
小野部 純
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会宮城県理学療法士会
雑誌
理学療法の歩み (ISSN:09172688)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.35-41, 2013 (Released:2013-04-16)
参考文献数
24

深部静脈血栓症とは,特に下腿部の深部静脈に血栓が出来る疾患をさし,肺血栓塞栓症を引き起こす一連の病態と捉えられ,患者の生命をも脅かすハイリスクなものである。理学療法場面では,特に人工膝関節置換術後などの整形外科疾患治療後に多く関わる病態であり,2011年に発生した東日本大震災の被災地においては,避難生活におけるリスクのひとつとして対応が行われていた病態でもある。適切な検査,治療を行うことにより発症を予防することが出来ることも知られており,本稿では血栓形成の基本的概念であるVirchowの3徴候と,近年の知見を交えながら概要について述べることとする。