著者
村田 裕美子
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.173, pp.16-30, 2019-08-25 (Released:2021-08-28)
参考文献数
23
被引用文献数
1

本調査は『多言語母語の日本語学習者横断コーパス (I-JAS)』を用いて同一被験者が同一テーマを異なる作業課題 (「話す」課題と「書く」課題) で産出したときの言語使用の実態をテキストマイニングの手法を用いて量的に比較分析したものである。分析の結果,1) 延べ語数の比較からは,「書き言葉」は「話し言葉」よりも産出語数が少ないこと,2) 異なり語数の比較からは,習熟度があがるにつれて,「書き言葉」において多様な語が用いられていること,3) 特徴語の比較からは,習熟度があがるにつれて,「話し言葉」と「書き言葉」で産出される言語形式が似てくることがわかった。本研究の特徴は,言語形式に注目し,質的に分析を行ってきたこれまでの研究をふまえ,600名分以上からなる学習者データ全体を俯瞰的に捉えたときに現れる言語的特徴を量的に明らかにしたところにある。