著者
杣川 知香 福田 雄高 吉村 正太 佐藤 慧 日宇 健 小野 智憲 牛島 隆二郎 戸田 啓介 堤 圭介
出版者
医学書院
雑誌
Neurological Surgery 脳神経外科 (ISSN:03012603)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.629-635, 2017-07-10

Ⅰ.はじめに 内頚動脈-後交通動脈分岐部動脈瘤(internal carotid-posterior communicating artery aneurysm:IC-PC AN)に合併する同側動眼神経麻痺(oculomotor nerve palsy:ONP)は,切迫破裂の警告症状やくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)に伴う局所神経症状として広く認知されているが,対側に生じることは極めて稀である19).今回われわれは,SAH発症約1日後に対側ONPを発症したIC-PC ANの稀な1例を経験した.文献的考察を加えて報告する.
著者
林 健太郎 杣川 知香 林 之茂 岩永 充人
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.149-154, 2020

<p>【目的】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術は外科手術に比して侵襲が少なく,試みられる治療である.動静脈瘻の部分に液体塞栓物質を到達させて塞栓することで根治が得られるが,注入に際しては流入動脈が細く屈曲していることも多いため,カテーテルの挿入が困難なことがある.挿入できたとしても椎骨動脈から流入動脈が分岐する場合には塞栓物質の椎骨動脈への逆流や血管ネットワークを介しての迷入などの危険性がある.【症例】54 歳女性.脳性麻痺のため全介助の状態であった.くも膜下出血にて発症した.右椎骨動脈造影で C4-6 レベルの根動脈から流入血管を受け,前脊髄静脈に流出する硬膜動静脈瘻を認めた.流出静脈には静脈瘤を認め,くも膜下出血の原因と考えられた.液体塞栓物質を用いて根治的に塞栓する方針とし,バルーンガイディングカテーテルを併用して右椎骨動脈の血流を逆流させた状態で液体塞栓物質を注入した.流出静脈から動静脈瘻にかけて塞栓した.術後,新たな神経学的異常はみられず,脳梗塞などの合併症もみられなかった.【結論】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術における近位部バルーンテクニックは有用である.</p>