著者
井上 佑樹 海老瀬 広規 横佐古 卓 新居 弘章 木附 宏
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.cr.2021-0033, (Released:2022-02-22)
参考文献数
19

【目的】内耳道内の前下小脳動脈meatal loopに生じた破裂脳動脈瘤に対してcoilによるinternal trappingを施行した1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.【症例】92歳女性,突然の頭痛,めまい,嘔吐を発症し,頭部CTでくも膜下出血,脳血管造影と頭部3D-CTAで左内耳道内に3.6 mm大の紡錘状左前下小脳動脈瘤を認めた.動脈瘤の位置・年齢・全身状態などを考慮してコイルによるinternal trappingを施行した.【結論】内耳道内前下小脳動脈瘤は瘤頚部クリップや瘤内塞栓が困難な場合があり,時にtrappingが選択される.Coilによるinternal trappingは遂行可能な治療選択肢だが,前下小脳動脈灌流域の梗塞に注意する必要がある.
著者
上宮 奈穂子 石原 正一郎 近藤 竜史 掛樋 善明 中館 雅志 徳重 一雄 都築 伸介
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.211-218, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
14

【目的】脳室内出血発症のもやもや病に合併した後脈絡叢動脈末梢部動脈瘤に対し N-butyl-2-cyanoacrylate(NBCA)による塞栓術を施行し,良好な経過を得た 2 例を報告する.【症例 1】 49 歳,女性.経過中に増大傾向を呈した内側後脈絡叢動脈遠位の動脈瘤に対し,NBCA にて塞栓し良好な経過を得た.【症例 2】46 歳,女性.出血源となった外側後脈絡叢動脈末梢動脈瘤に対し,NBCA による塞栓術を施行.神経内視鏡下に脳室内血腫除去術中,塞栓された脳室壁に位置する動脈瘤を確認した.【結論】もやもや病の側副血行路に合併する末梢動脈瘤に対しては,血管解剖を理解し適切なデバイス選択による塞栓術が有効であった.
著者
戸村 九月 川﨑 怜子 北村 美月 中山 貴博 今福 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.cr.2020-0015, (Released:2020-11-24)
参考文献数
20

【目的】血栓回収後に過灌流症候群(CHS)と非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)が疑われた 1 例を経験したので報告する.【症例】68 歳女性,意識障害を主訴に救急搬送.左中大脳動脈(MCA)閉塞の診断で血栓回収療法を施行して完全再開通を得たが,意識障害の遷延を認めた.治療同日のMRI では DWI 所見は消失し,再開通を維持していたが,第 3 病日の MRI で虚血領域の皮質を中心とした高信号と同領域の脳血流上昇を認め,脳波所見と併せて CHS と NCSE の並存が疑われた.内科的加療により臨床症状は徐々に改善を認めたが,高次脳機能障害が残存した.【結論】血栓回収後に治療経過に見合わない意識障害の遷延や悪化を来す場合,CHS や NCSE を鑑別診断に挙げた精査を行う必要がある.
著者
加藤 美奈子 浅井 琢美 荻 紗綾 杉本 学 荒木 悠里 高橋 立夫 須崎 法幸
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.57-61, 2022 (Released:2022-09-20)
参考文献数
16

【目的】全身麻酔中の保温は,全身合併症の予防に重要であるが,これまで破裂脳動脈瘤コイル塞栓術中に体温が低下する経験をした.今回保温目的で導入した,アルミ薄膜付きの覆布(以下,サンステート)の体温低下予防効果につき,後ろ向きに検討した.【方法】2017年5月から2018年6月の期間に,全身麻酔下で緊急コイル塞栓術を受けた患者50名のうち,来院時心肺停止,入室前38.0°C以上の発熱例,来院から24時間以降に治療を開始した例を除いた33名を対象とした.サンステートを導入前後で2群(導入前=A群,後=B群)に分け,BMI, 血管撮影室入室時体温,退室時体温,治療時間について比較検討した.【結果】対象例はA群14例,B群19例であり,年齢(58.4歳vs 57.8歳),性別(女性:78.6% vs 63.2%),BMI(22.6 kg/m2 vs 23.2 kg/m2), 入室時体温(35.3°C vs 35.5°C),治療時間(169分vs 190分)については両群に差はみられなかった.退室時体温はB群で有意に高く(35.5°C vs 36.1°C, p=0.04),体温低下例はB群で有意に少なかった(43% vs 5%, p=0.03).【結論】サンステートの導入により,全身麻酔下における破裂脳動脈瘤コイル塞栓術中の体温低下を予防する効果が確認された.覆布の使用は,血管内治療時の体温低下予防に有用であることが示唆された.
著者
岡本 宗司 久保 道也 林 智秀 堀 聡 堀 恵美子 柴田 孝 堀江 幸男 桑山 直也 黒田 敏
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.159-165, 2014
被引用文献数
3

【目的】神経線維腫症に合併した頭蓋外巨大内頚動脈瘤破裂例に対してtriple coaxial system を用いて内頚動脈トラッピング術を施行したので報告する.【症例】症例は41 歳の神経線維腫の女性.左頸部の急激な腫脹,嗄声,嚥下障害が生じ,当院に入院した.頚部CT では長径約40 mm の頭蓋外内頚動脈瘤を認め,咽喉頭部が対側に偏位していた.MRI では,動脈瘤からの出血を示唆する所見があり,再出血防止目的で緊急血管内治療を行った.血管脆弱性と術後のmass effect 増大防止の観点から動脈瘤の前後で内頚動脈をトラッピングする方針とした.バルーン付きガイディングカテーテルをproximal flow control 用に内頚動脈起始部に留置し,動脈瘤の遠位にマイクロカテーテルを誘導したが,支持性が弱く,コイル挿入時に動脈瘤内にキックバックした.そこでインナーカテーテルとして4FrセルリアンGTM を組み合わせ,triple coaxial system とした.その結果,瘤の遠位・近位ともに内頚動脈にコイルをコンパクトに留置でき,トラッピングすることができた.術後,症状は改善し,MRI では,動脈瘤の血栓化を認めた.【結論】頚部内頸動脈瘤に対して母血管のトラッピングを行う場合,バルーン付きガイディングカテーテルに4Fr インナーカテーテルを組み合わせたtriple coaxial system は有用と思われた.
著者
矢木 亮吉 宮地 茂 平松 亮 川端 信司 藤城 高広 黒岩 輝壮 谷口 博克 山田 誠 山田 佳孝 大西 宏之 山下 太郎 松原 功明 黒岩 敏彦
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.oa.2017-0008, (Released:2018-01-29)
参考文献数
13

【目的】今回われわれは,本邦で承認されている脳血栓回収療法機器それぞれにおける医療費およびその治療成績を比較するために,患者毎の保険請求額,手技料,デバイス料と治療成績を集計し検証した.【方法】本学および関連施設にて「K178-4 経皮的脳血栓回収術30,230 点」を算定した患者126 例を対象とし, Penumbra system を使用した症例を「P 群」,Stent-Retriever を使用した症例を「S 群」,両デバイスを併用した症例を「P+S 群」とし,各症例の入院にかかる総保険請求額,手術にかかる手技料およびデバイス料,治療成績について比較した.【結果】全体では費用に対する治療成績に優劣は認めなかったが,後方循環病変ではS 群でmodified Rankin Scale (mRS)0-2が高率であり,1 日平均請求額が低額であった.前方循環病変ではP 群でmRS0-2 が高率であり,1 日平均請求額および総保険請求額が低額であった.【結論】急性期血栓回収術施行症例では,デバイス料がS 群で最も安価であった.また閉塞部位が前方循環ではP 群,後方循環ではS 群が治療成績良好で費用も低額であり,良好な治療と判断した.
著者
金丸 英樹 佐藤 徹 菅田 真生 石井 大造 丸山 大輔 林 正孝 濱野 栄佳 井手口 稔 片岡 大治 高橋 淳
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
pp.jnet.oa.2015-0039, (Released:2015-10-02)
参考文献数
11
被引用文献数
4 1

要旨: 【目的】近年脳血管内治療は普及の一途をとげているが,病変へのアクセス時に,ガイディングカテーテル(GC)を母血管に干渉せず留置できるかどうかは治療の成否に関与する重要な因子の一つである.そこで,GC を留置する際に機械的血管攣縮(mechanical vasospasm; mVS)を惹起する因子について検討した.【方法】対象は2012 年8 月1 日より2014 年7 月31 日までの2 年間に未破裂脳動脈瘤に対しコイル塞栓術を施行した連続64 例とし後方視的に検討した.mVS の定義として,GC を留置した母血管径が25%以上狭小化するものとした.【結果】mVS は24 例(38%)に認め,そのうちGC のサイズ変更を要したものは5 例,その他の症例では先端位置を変えることで攣縮所見は全例軽快した.mVS と関連する因子として,より年齢が若いこと(p<0.001),女性(p=0.03),高血圧でないもの(p=0.03)を認めた.Body Mass Index,Adjunctive technique の有無,治療後のDWI 高信号域の有無,治療時間,部位(ICA/VA),抗血小板療法(Single/Dual)は関連を認めなかった.【結論】より年齢の若い症例,女性,高血圧のない症例では機械的血管攣縮を引き起こしやすいと考えられる.
著者
関 優子 清水 立矢 藍原 正憲 山口 玲 相島 薫 好本 裕平 安藤 雅 須藤 高行 対馬 義人
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.oa.2021-0018, (Released:2021-09-17)
参考文献数
13

【目的】血管内治療のアクセスルートとなる大動脈弓部の形態がアプローチ時間に与える影響を検討する.評価に際して,単純 CT の 2D 画像から,造影 3DCTA と同等の大動脈弓部の情報を取得できるか検討する.【方法】2017 年から 2019 年に大腿動脈経由で脳血管内治療を施行した連続症例のうち,大動脈弓部を含む CTA を行った 65 名を対象とした.目的血管と大動脈弓(頂部もしくは下縁)のなす角度,大動脈弓頂部から目的血管分岐までの距離を 2D 画像および 3D 画像で計測し,年齢,性別,穿刺部位,アプローチ時間(穿刺時刻からガイディングカテーテル留置後の目的血管造影までの時間),治療方法,疾患名,検査時間,治療部位との関連を後方視的に検討した.【結果】アプローチ時間は平均 24 分であった.2D と 3D の計測では,大動脈弓下縁と分岐血管の角度(r=0.721)と大動脈弓頂部からの距離(r=0.858)で強い相関を認めた.2D 計測にてアプローチ時間と大動脈弓頂部から分岐までの距離においては正の相関を認めた(r=0.478).また,大動脈弓と目的血管分岐がなす角度には負の相関(r=−0.197)を認め,大動脈弓下縁との分岐角(r=−0.298)がより相関が強かった.【結論】2D での簡便な計測でも,3D と同等の情報を得ることができる.大動脈弓頂部から目的血管分岐までの距離が長い,または目的血管と大動脈弓下縁のなす角度が鋭角なほどアプローチ時間は長くなる.
著者
Ryosuke Tomio Tsuyoshi Uesugi Kazunori Akaji
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.85-89, 2020 (Released:2020-03-20)
参考文献数
4
被引用文献数
1

Objective: The optimal heating temperature and time for the Echelon10 and Excelsior SL-10 microcatheters using a heat gun was investigated. The durability of the microcatheters after heat gun shaping for the second and third times was also examined.Methods: HAKKO FV-310 was used as the heat gun in this study. This heat gun can be set to 115°C, 125°C, and others. We measured the temperature at 2.5 cm from the nozzle of the heat gun. The Echelon10 and SL-10 microcatheters were shaped under two temperature conditions (115°C and 125°C) and three heating times (30 sec, 60 sec, and 90 sec). The microcatheter shape before heating had twice the curvature of the targeted shape.Results: The temperatures at 2.5 cm from the nozzle were 120.6°C and 127.8°C with the heat gun set at 115°C and 125°C, respectively. There was no macroscopic difference in the results of heat gun shaping of the Echelon10 among temperature settings (115°C and 125°C) or heating times (30 sec, 60 sec, and 90 sec). As degeneration of the heated tip of the SL-10 at 125°C occurred in four of five trials, heat gun shaping was performed using the 115°C setting. There was no macroscopic difference in the results of heat gun shaping of the SL-10 among heating times. Shaping for the second and third times was successful at 115°C and 30-sec heating time.Conclusions: The Echelon10 and SL-10 can be successfully shaped from twice the curvature of the targeted shape using a heat gun at 120°C for 30 sec. Shaping for the second and third times was successful using the same settings. Degeneration of the SL-10 was noted at temperatures above 130°C.
著者
川崎 敏生 早瀬 睦 宮腰 明典 多喜 純也 中村 威彦 波多野 武人
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
pp.cr.2015-0002, (Released:2015-04-27)
参考文献数
20
被引用文献数
3 4

【目的】未破裂脳動脈瘤コイル塞栓術後に造影剤脳症と考えられる2 症例を経験したので報告する.【症例】症例1 は75 歳男性.右前大脳動脈に未破裂動脈瘤を認め,コイル塞栓術を施行直後から左上下肢不全麻痺を認めた.症例2は65 歳女性.未破裂左内頚動脈後交通動脈に対するコイル塞栓術直後から右上下肢不全麻痺と失語を認めた.2 症例共にCT にて患側大脳半球に高吸収域を認めたが,速やかに消失した.MRI では症状を呈するような虚血性病変は認められなかった.全身性痙攣も併発したが,完全に症状は消失し退院となった.【結論】造影剤脳症による合併症は稀ではあるが,血管内治療後の神経症状の原因として注意すべき病態である.
著者
梅田 靖之 石田 藤麿 辻 正範 古川 和博 佐野 貴則 当麻 直樹 阪井田 博司 霜坂 辰一 鈴木 秀謙
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.69-77, 2015 (Released:2015-05-31)
参考文献数
21
被引用文献数
7 10

【目的】瘤内コイル塞栓術を仮想した多孔質媒体モデルを用いた数値流体力学(computational fluid dynamics: CFD)解析をおこない,術後閉塞状態の予測に有用な血行力学的パラメータを開発する.【方法】コイル塞栓術を施行した未破裂脳動脈瘤20 例を対象とした.瘤内残存血流体積(residual flow volume,RFV)という血行力学的パラメータを考案し,術後閉塞状態の予測に有用か後方視的に検討した.【結果】術後6~12 カ月の脳血管撮影で完全閉塞は11 例,不完全閉塞は9 例であった.仮想コイル塞栓術後CFD 解析では,RFV は不完全閉塞群で有意に大きかった.RFV はreceiver operating characteristic(ROC)解析において,コイル充填率よりもROC 曲線下面積が大きく,RFV の閾値血流速度を1.0 cm/sec 以上とする設定が最も診断精度が高かった.【結語】多孔質媒体モデルを用いたCFD 解析により,術前算出可能なRFV が術後塞栓状態を予測する有用な血行力学的パラメータであることが明らかとなり,治療戦略への応用が期待できる.
著者
西野 航 山内 利宏 安藤 亮 松浦 威一郎 橋本 憲一郎 鈴木 浩二 相川 光広 古口 徳雄 宮田 昭宏
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, pp.181-188, 2021 (Released:2021-12-20)
参考文献数
10

【目的】多血性側脳室三角部髄膜腫に対する摘出術前塞栓術を行った 1 小児例の経験から,この部位の髄膜種に対する塞栓術の戦略を検討した.【症例】13 歳女児.主訴は左麻痺.術前塞栓を施行せず行った初回摘出術は,わずかな摘出にとどまった.後大脳動脈皮質枝からの栄養動脈を液体塞栓物質で塞栓した 2 回目の摘出術は,塞栓で壊死した後方 2/3 を摘出した.2 年後に再増大し,後脈絡叢動脈からの栄養動脈を同様に塞栓し,腫瘍を全摘出した.【結論】脈絡叢動脈の終末血管によって構成されていた側脳室三角部髄膜腫に対し,液体塞栓物質を圧入せずに栄養動脈の近位部閉塞のみで十分に塞栓効果を得ることができた 1 例を経験した.
著者
小宮山 雅樹
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.5-15, 2015 (Released:2015-03-31)
参考文献数
31
被引用文献数
2 1

中枢神経系の血管病変の安全・確実な外科的治療や血管内治療に詳細な血管解剖の理解は必須である.そのような解剖の画像データは低侵襲なCT やMR で得られるようになり,今日では診断の第一選択になっている.カテーテル血管撮影には,検査自体の持つ避けることのできない種々の合併症の可能性があるが,今でも多くの症例において重要な診断手段である.著者は中枢神経系の血管系の画像診断,特にCT やMR の3 次元再構成画像に加えカテーテル血管撮影による画像診断における立体視(立体血管撮影)の役割の概説を行った.
著者
林 健太郎 杣川 知香 林 之茂 岩永 充人
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.149-154, 2020

<p>【目的】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術は外科手術に比して侵襲が少なく,試みられる治療である.動静脈瘻の部分に液体塞栓物質を到達させて塞栓することで根治が得られるが,注入に際しては流入動脈が細く屈曲していることも多いため,カテーテルの挿入が困難なことがある.挿入できたとしても椎骨動脈から流入動脈が分岐する場合には塞栓物質の椎骨動脈への逆流や血管ネットワークを介しての迷入などの危険性がある.【症例】54 歳女性.脳性麻痺のため全介助の状態であった.くも膜下出血にて発症した.右椎骨動脈造影で C4-6 レベルの根動脈から流入血管を受け,前脊髄静脈に流出する硬膜動静脈瘻を認めた.流出静脈には静脈瘤を認め,くも膜下出血の原因と考えられた.液体塞栓物質を用いて根治的に塞栓する方針とし,バルーンガイディングカテーテルを併用して右椎骨動脈の血流を逆流させた状態で液体塞栓物質を注入した.流出静脈から動静脈瘻にかけて塞栓した.術後,新たな神経学的異常はみられず,脳梗塞などの合併症もみられなかった.【結論】脊髄硬膜動静脈瘻に対する経動脈塞栓術における近位部バルーンテクニックは有用である.</p>
著者
豊田 真吾 立石 明広 熊谷 哲也 菅野 皓文 山本 祥太 千葉 泰良 森 鑑二 瀧 琢有
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳神経血管内治療 (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.285-288, 2014

要旨: 【目的】今回我々は,脳血管内治療における3D ワークステーションの微細な術中操作を目的として,ワイヤレスマウスを活用したため報告する.【症例】2013 年8 月から2014 年6 月までの脳血管内治療連続70 例を対象とした.3Dワークステーション専用コンピュータにワイヤレスマウスレシーバーを接続,ワイヤレスマウスを用いてテーブルサイドで3D ワークステーションの術中操作を行った.本法により,テーブルサイドでも操作室のコンソールと同様に,3D ワークステーションの微細な術中操作が可能であった.【結論】本法は,脳血管内治療を効率的に行う一助となると考えられた.
著者
福田 健治 湧田 尚樹 武村 有祐 八尋 龍巳 山本 聡 本永 英治 安達 忍 井上 亨
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.80-85, 2020

<p>【目的】宮古島は人口約54600 人であり,那覇から約300 km 南西に位置する.石垣島などを含めた先島諸島では,沖縄本島へのヘリ搬送は人的,時間的負担が大きいことから,緊急症例も含めたほとんどの疾患に対して地域完結型医療が求められている.宮古島における脳血管内治療医着任前後における治療数の変化および先島諸島における脳血管内治療普及の取り組みを報告する.【方法】着任前を前期:2013 年9 月から2016 年3 月,着任後を後期:2016 年4 月から2018 年9 月とし,後方視的に調査した.【結果】全脳神経外科手術における脳血管内治療は,前期5.9%(11/188 例)から後期13.6%(24/176 例)に有意に増加した(p=0.01).脳動脈瘤や頚動脈狭窄症において,直達手術の難易度が高くなる症例を中心に血管内治療を選択したことが症例数の増加の主要因であった.急性期主幹動脈閉塞に対する再開通療法において,後期群では来院から穿刺(中央値137 分 vs 217 分,p=0.01)および穿刺から再開通(中央値67 分 vs 112分,p=0.01)までの時間が改善した.石垣島にある県立八重山病院とも連携し,3 例の破裂脳動脈瘤の治療が行われた.【結論】先島諸島における脳血管内治療の必要性は高く,今後も安定した脳血管内治療医の定着およびさらなる発展が重要である.</p>
著者
スィーワッタナクン キッティポン 浅井 さとみ 平山 晃大 重松 秀明 新井田 牧子 川上 智子 反町 隆俊 松前 光紀
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.sr.2020-1000, (Released:2020-05-15)
参考文献数
11

新型コロナウイルス感染症が社会および医療システムに大きな問題を起こしているが,機械的血栓回収術のような緊急度が非常に高い治療は提供し続ける必要がある.しかし一方で,コロナウイルス感染症は院内感染を来しやすいため,その予防にも努めなければならない.本稿ではCOVID-19 疑い例に対する緊急血管内治療における患者スクリーニングや評価,感染予防・環境汚染対策のための当院のプロトコールを紹介する.
著者
多喜 純也 早瀬 睦 宮腰 明典 北原 孝宏 服部 悦子 中村 威彦 波多野 武人
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.14-23, 2016 (Released:2016-10-17)
参考文献数
26

【目的】Penumbra 5MAX ACE を用いて“a direct aspiration first pass technique(ADAPT)”を行った初期経験に基づき,有用性を報告する.【方法】2014 年10 月から2015 年3 月の間に血栓回収療法を行った連続8 症例のうち,5MAX ACE を吸引カテーテルあるいは中間径カテーテルとして用いADAPT を行った7 例を後方視的に解析した.【結果】平均年齢76.9 歳.閉塞部位は中大脳動脈M1 遠位3 例,M2 2 例,脳底動脈2 例.治療前平均National Institutes of Health Stroke Scale(NIHSS)16.0,治療開始までの平均時間は315 分.5 例(M1 遠位2 例,M2 1 例,BA 2 例)で5MAX ACE が閉塞部位に到達し,2 例は同軸に用いた3MAXでADAPT を施行.6 例で有効な再開通(Thrombolysis in Cerebral Infarction[TICI] 3 5例,TICI 2b 1 例)を得た.治療24 時間後NIHSS は平均7.7 であった.手技に伴う頭蓋内出血は認めなかった.【結論】5MAX ACE は口径が拡大したが,追従性にも優れており,より安全,有効に血栓回収が行えるものと考えられた.
著者
榎本 由貴子 吉村 紳一 高木 俊範 辻本 真範 石澤 錠二 岩間 亨
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
Journal of Neuroendovascular Therapy (ISSN:18824072)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.251-258, 2014 (Released:2015-02-03)
参考文献数
24
被引用文献数
2 3

要旨: 【目的】緊急脳血管内治療時における抗血小板薬のローディングドーズ投与後の血小板反応性の経時的変化をVerifyNow system を用いて測定し,予定治療症例と比較検討する.【方法】2011 年6 月から2013 年12 月の間にクロピドグレル300 mg とアスピリン200 mg のローディングドーズ投与を行った急性期脳主幹動脈閉塞症;acute 群13例と,クロピドグレル300 mg のローディングドーズ投与のみを行った予定治療群;elective 群10 例.投与前,投与6・24・48〜72 時間後にVerifyNow を用いてaspirin reaction unit(ARU),P2Y12 reaction unit(PRU),% inhibition を測定し,その経時的変化を検討するとともに,24 時間後の低反応性(PRU>230,% inhibition<26%,ARU>550)に関連する因子について検討した.【結果】クロピドグレルの効果はelective 群では24 時間後に十分得られていたが,acute群では48 時間後以降も不十分であった.一方,アスピリンの効果は内服6 時間後には十分発現されていた.クロピドグレル低反応性(15/23 例:65.2%)はacute 群(p=0.0018)とbody mass index(p=0.005)に関連が認められた.アスピリン低反応性はacute 群の13 例中3 例(23.1%)に認め,年齢(79±1.73 vs 68.5±14.5,p=0.049)のみ関連が認められた.【結論】ローディングドーズ投与法は早期に効果が発現される投与法であるが,急性期脳梗塞においてはクロピドグレルの効果が発現されにくい可能性が示唆された.