著者
大河内 二郎 東 憲太郎
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.25-35, 2023-05-29 (Released:2023-07-06)
参考文献数
18

介護保険法により介護老人保健施設(以下,老健施設)の対象者は,「要介護者であって,主としてその心身の機能の維持回復を図り,居宅における生活を営むための支援を必要とする者」である。従って,老健施設は入所し続ける施設ではなく,居宅での生活を維持しつつ,リハビリテーション等の目的で施設利用をする高齢者に対して総合的なサービスを多職種で行っているという特徴がある。老健施設を繰り返し利用している中で,人生の最期を老健施設で過ごすことになる高齢者が増えている。2017年には約7割の老健施設が看取り機能を有していた。老健施設における看取りの満足度調査では約9割の利用者の家族が看取り後に満足と答えており,その施設側要因としては,多職種での利用者への説明と,より早期の看取りへの説明等が要因として挙げられた。また老健施設は通所リハビリテーションや訪問リハビリテーション等のサービスを提供していることから,在宅高齢者がより軽度な障害を負った時点から以後の生活を支えることができる。つまり老健施設では,単なる終末期の看取りだけではなく,対象者が元気なうちから残りの人生をどこで,どのように生きるのかということも含めて支援が可能な側面がある。従って単なる終末期医療 “End of Life care”ではなく,“Life Care”と考えることで,よりそれぞれの利用者の個別性に立ったマネジメントが可能になると考えられる。