- 著者
-
東元 幾代
- 出版者
- 佐賀大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2004
手掌多汗症は、精神的緊張により手掌の過剰発汗(精神性発汗)を生じる疾患である。0.6〜1%の頻度で生じ、幼小児期〜思春期に発症することが多い。これまでに当院でETSを受けた手掌多汗症患者において、約半数で家族発症が認められたことから、患者約400名に対し家系調査を行った。その結果、完全に把握できた家系では、環境因子の関与、多因子遺伝の可能性もあるが、常染色体優性遺伝、つまり単一遺伝子病の可能性が高いことがわかった。我々は32家系178人の血液又は爪からDNA抽出を行い、そのうち三世代以上の比較的大きな家系を用いて全ゲノム解析を行った(ABI PRISM Mapping Set使用)。その結果、LOD scoreが高値を示す10カ所のマーカーをピックアップした。さらにhaplotype解析を行い、三家系に共通して、D14S283周囲に疾患遺伝子があると予測された。(二点解析にてLOD score 2.92)また、その他の家系において、6番染色体、7番染色体にもLOD scoreが高値を示す部分を認めた。多数の家系に共通する新たな遺伝子座を決定するため、さらに三世代以上のサンプルが得られる家系3家系を集めた。内、1家系は手掌多汗症と足底多汗症が合併した患者が混在しており、解析に不適当であったため、除外された。残る2家系をLOD scoreが高値を示す10カ所のマーカーについて解析を行ったが、同部位でのLOD scoreは低値で、連鎖は認められず、今回行った解析部以外の原因遺伝子の関与が考えられた。そのため、多因子遺伝の可能性も否定できなかった。